琴奨菊引退 努力の人

 この力士は努力抜きには語れない。琴奨菊は新入幕から新大関まで約7年を要している。現役大関に関して言えばその期間は貴景勝は2年、朝乃山は2年半、そして正代は約4年である。いかに時間がかかっているかが分かっていただけると思う。また身長180センチで幕内力士の中では大きいほうではなく、体に柔軟性があった訳でもない。当時の横綱・大関と比べても才能面で恵まれていなかったのは明らかである。しかし日々の稽古でコツコツと力を付け、大関昇進をモノにした。

 大関昇進前の印象も精一杯頑張っての結果という感じが強く、大関に上がれる可能性は半々だと私は見ていた。しかし大関昇進直前の場所で12勝を挙げ、自らの手で大関昇進を手繰り寄せた。才能に恵まれていながら能力を持て余す力士もいるが琴奨菊はその逆である。自らの能力を精一杯発揮した上に日々の努力も怠らなかった。また努力だけでなく、苦難がありながらも大関を32場所務めたという点で精神的な粘り強さも評価されていいと思う。少なくとも私は琴奨菊は5年以上大関を務めるとは予想していなかった。いい意味で裏切られたといった感じである。