今年の大関候補2024 朝乃山 その1

・去年1年に関して

 1月場所で十両に復帰すると14勝1敗で初の十両優勝を果たした。翌3月場所は東十両筆頭だったが優勝は逃したものの13勝2敗の好成績を挙げた。5月場所は約2年ぶりの再入幕となったが優勝争いに絡み、13日目は優勝争いでトップを走っていた照ノ富士と対戦した。しかし小手投げで敗れ、横綱の優勝を許した。それでも12勝をマークし、大関復帰に向けて大きくアピールした。7月場所は東前頭4枚目となり、上位力士と対戦する可能性のある位置まで戻ってきた。しかし4勝2敗で迎えた7日目の豊昇龍戦の取組中に左腕を痛め、翌日から休場した。しかし12日目から再出場し、4番全てに勝って8勝を挙げ、勝ち越しとなった。強行出場だったが結果としては報われた。

 しかしその後が大変だった。左腕を痛め、夏巡業を休場していたが8月19日から復帰した。しかし27日の氷見巡業で右足親指を痛めた。そして場所前はほとんど相撲が取れないまま9月場所を迎えてしまった。それでも9月場所は9勝6敗で勝ち越した。ただ周囲との兼ね合いで三役復帰は見送られる公算が高くなった。また三大関には全て負けており、怪我を抱えていたにしても大関復帰が簡単ではないことをうかがわせた。

 その後は秋巡業は参加したが10月28日の広島巡業で左ふくらはぎを痛め、巡業を離脱した。それが原因で11月場所は初日から休場した。そして8日目から途中出場したが、最終的には4勝4敗7休という成績に終わった。ということで復帰後初の負け越しとなり、番付降下となった。また目標に掲げていた2023年内の三役復帰は叶わなかった。

 そして触れない訳にはいかないのが2023年11月2日に入門時からの師匠だった元大関朝潮が亡くなったことである。師匠の下で伸び伸びと育ち、大関まで上がれたのは確かである。またこれまで高校時代の恩師、大学時代の恩師に加えて父親も亡くしており、背負うものが更に大きくなった感じがする。ということで元師匠の死も含めていろいろな出来事に見舞われた一年と言っていいと思う。

・課題

 元大関なので番付を戻していくだけであるが、強いて挙げれば調整力が挙げられる。夏巡業も秋巡業も懸命に稽古していたのは評価できるが、怪我をして本場所の土俵に響いているのが気になる。元大関なので稽古量も自ら加減できるはずである。追い込みたいという気持ちは理解できるが、本場所ならともかく、稽古場での怪我はできるだけ避けなければいけない。危機感を持つのはいいことだが、番付が上の霧島や豊昇龍より体が大きく、馬力は二人より上である。慌てるのではなく、もう少し自分の相撲に自信をもって稽古に取り組んで欲しい。

 復帰前よりも相撲内容は進化しており、以前は見られなかったおっつけながら前に出る相撲も出てきた。また得意の右四つにこだわらず、馬力で圧倒する内容もあり、前に出る意識が強くなってきた。立派な体格をしており、あとは繰り返しになるが、自分の能力を信じ、怪我に注意しながら相撲を取って欲しいというのが私の願いである。