今年の大関候補2023 若隆景

 東関脇であり、現時点では大関に一番近い力士と言っていいと思う。そして東関脇の地位で連続勝ち越ししている点は素直に評価したい。

・去年1年に関して

 3月場所に新関脇に昇進し、初優勝を果たした。そして三役に定着し、9月場所は11勝をマークしたが2場所連続二桁勝利は挙げられていない。また去年は年間最多勝を挙げており、幕内で一番活躍した力士と言っていいと思う。

・課題

 最近は安定感を増すために立ち合いから前廻しを求めに行く相撲が多いが、それが上手くいっていない印象がある。そして相手もそれが分かっており、叩いて押し潰すような動きが多く見られる。足腰はいいので叩かれても残せるが、その後の相撲の流れが悪くなっているのが現状である。強い時は一方的な相撲で圧倒するのだが…。

 また研究され、軽量を突かれる相撲が増えてきたのも気になる。今年1月場所でいえば2日目の御嶽海戦のように左から抱えられ、体を密着されて一気に寄られたらどうしようもない。こういった相撲が続くようであれば安定感には欠けるものの、以前のようにおっつけを主体とした動き回る相撲でもいいのではないかというのが私の考えである。いずれにしても大関に上がるためには体重で負けるような相撲は減らした方がいいのは言うまでもない。

・今後に向けて

 三役で勝ち越せる力はあるので次は2場所連続で二桁勝利を挙げるなど、大関に向けては星を揃える必要がある。1月場所は9勝に終わり、二桁は勝てなかった。前半戦で4敗し、その全てが平幕力士が相手というのが痛い。

 年齢は28歳であり、私はこの一年が大関昇進のチャンスだと見ている。逆を言えば今年チャンスを逃すようだと大関に向けては苦しくなりそうな気がする。おそらく豊昇龍と琴ノ若は今年一年で力を付けてくると思う。そして元大関朝乃山が今年後半には上位陣と対戦できる地位まで番付を戻してきそうである。後々を考えれば決して楽観できる状況ではない。二桁勝利を挙げられず、もたつくようなことがあれば他の力士に先を越される可能性がある。

 また最近は体重130キロ台の軽量力士の大関獲りの記憶がない。ということで調べてみたが、2009年1月場所に安馬、後の日馬富士が大関に昇進している。それ以来である。日馬富士は体は小さかったが時に爆発力のある強烈な立ち合いを見せていた。若隆景は立ち合いの当たりは強いものの、相手をのけぞらせる程の立ち合いができる力士ではない。他の部分で補う必要がある。久々の軽量力士の大関挑戦という意味でも今後どうなるか、私は注目している。