2021年1月場所個別評価 隆の勝

 9勝6敗で勝ち越した。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は白星と黒星が交互に続いたが14日目に勝ち越しを決めた。また千秋楽も勝ち、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては押し相撲で白星を挙げていたが右を差した時は力を発揮していた。そして何より相撲に粘りが出てきたのが大きい。特に初日の宝富士戦や5日目の御嶽海戦は土俵際まで追い詰められたが劣勢を跳ね返し、白星を手にした。去年の11月場所は8勝だったが今場所は9勝だった。私は粘りが出てきた分のプラス1勝だと見ている。おそらく貴景勝との稽古が実を結んできているのだと思う。以前はすぐに手を着いて負ける相撲が多かったがそれがかなり減ってきた。地力がついてきている証拠だと思う。

 しかしその一方で押し相撲でありながら阿武咲戦、玉鷲戦、大栄翔戦は押し負けていた。上を目指すのであればより高い安定感が求められる。それでも新関脇から2場所連続勝ち越しはそれ自体なかなかできることではない。今場所はさほど目立たなかったものの、強くなっているのは明らかである。また個人的には千秋楽に高安に勝ち、9勝目を挙げたのは大きいと見ている。3月場所にレベルの高い成績を残せば5月場所に大関獲りという可能性もあるからである。しかし貴景勝のように野心を持っているといった性格ではないので本人が言うように大関は考えすぎない方がいいのかもしれない。

 3月場所に関しては大関昇進の起点となる2桁勝利を期待したい。ただ隆の勝には星勘定は意識せず、貴景勝との稽古の延長線上で本場所の相撲を取って欲しい。もう少し地力が付けば大関昇進も現実的なものになってくる。また今までは叩かれて負けることが多かったが最近は自ら叩いて勝つなど、相撲の幅が広がってきた。あとは1月場所は勝てなかったが大関戦に勝てばアピールになるので頑張って欲しい。相撲に安定感があるタイプなので今後も注目したい。