2020年11月場所個別評価 志摩ノ海

2024年5月22日

 東前頭17枚目だったが11勝4敗の好成績で敢闘賞を受賞した。初日から5連勝し、6日目は逸ノ城に寄り切りで敗れるも7日目から再び連勝した。そして12日目終了時点で1敗を守り、貴景勝とともに優勝争いの先頭に立っていた。本来なら幕尻であり、上位力士と対戦する番付ではない。しかし今年は徳勝龍と元大関の照ノ富士が平幕優勝を果たしており、審判部は割を崩して上位力士との取組を決めた。13日目は貴景勝との1敗同士の対戦となった。貴景勝のぶちかましは凌いだものの、左からの突き落としはこらえきれず、体が泳いだところを押し出された。これで2敗となり、優勝争いから一歩後退した。そして14日目は照ノ富士との2敗同士の対戦となったが左からおっつけるも圧力をかけられ、右を差されると左上手を取られ、最後は頭を付けられて寄り切られた。抵抗はしたものの、完敗という相撲内容だった。これで3敗となり、優勝争いから脱落した。そして千秋楽も敗れ、11勝4敗で場所を終えた。

 内容に関しては体を丸くしての押し相撲で白星を伸ばした。また四つ相撲も取れる力士であり、流れ次第では差して前に出る相撲も見られた。そして体の動きが非常によく、先場所までとは別人と言っていいくらいの内容だった。明徳義塾高校、近大、木瀬部屋、幕尻とくるとやはり今年1月場所に初優勝した兄弟子の徳勝龍が思い浮かぶ。12日目までの快進撃は1月場所の徳勝龍を観ているようだった。一つ違ったのは1月場所は貴景勝は9日目で2敗しており、徳勝龍が優勝争いの先頭に立っていた。しかし今場所は貴景勝が1敗を守っており、小結照ノ富士も2敗で追走していた。上位力士が崩れなかったという点で志摩ノ海に運が向かなかったとも言える。それでも大関と元大関に真っ向勝負できたのは勝敗に関係なく、今後の財産になるはずである。優勝できなかったのは悔しいかもしれないが、貴重な経験を積めたという意味では意義があったと思う。

 1月場所は東前頭10枚目という番付になった。年齢は31歳であり、上を目指すというよりも、引き続き押し相撲に磨きをかけてほしい。また師匠が話しているように調子にムラのある力士なので性格的にはあまりアテにしてはいけないタイプである。番付を上げるというよりも、再度平幕下位で快進撃を見せる可能性は十分ありそうだ。繰り返しになるが、上位力士相手にはスピード負けしてしまうので、コツコツと自分の相撲を取ることに集中してほしい。地味な力士だが、こういった力士にスポットライトが当たるのは私としても嬉しい。今後もしぶとい相撲を期待したい。