2023年11月場所個別評価 若元春

 今場所は6勝9敗で負け越した。また負け越しは8場所ぶりとなった。前半戦は番付が下の力士との取組が続いての3勝5敗であり、上位戦の前に厳しい状況に追い込まれた。そして後半戦は10日目から4連敗して9敗となり、来場所の平幕からの出直しが濃厚となった。終盤は連勝し、二桁黒星は阻止した。

 内容に関しては体の動きにキレがなく、得意の右上手を取っても勝てないなど精彩を欠いていた。先場所あたりから感じていたのだが、三役の地位で厳しい相撲が続いたので勤続疲労が体の動きに表れた印象である。ひょっとしたら体のどこかを痛めていたり、内臓が悪かったりといったこともあったかもしれない。こうなってしまうのはある意味当然のことであり、番付を守ることの難しさを物語っている。私的には若元春のようになるのが当たり前であり、大関昇進まではいかなくても関脇の地位を守っている大栄翔が凄いと思っている。しかし本人も相当悔しかったのだろう。取材拒否の日が続いたようである。

 さて今場所は残念な結果に終わったが、今年一年を振り返ると飛躍を遂げたのは間違いない。1月場所で新小結となり、二場所連続で勝ち越すと5月場所は新関脇となった。先場所までは関脇で三場所連続で9勝以上をマークしており、大関候補として注目された。また今年3月場所で右膝を痛め、幕下に番付を下げている弟の若隆景と入れ替わるような形でスポットライトを浴びた。今や人気力士の一人であり、若隆景の兄と言われていた頃が嘘のようである。

 来場所は平幕に番付を下げ、おそらく東前頭筆頭ということになると思う。勝ち越せば三役に復帰できる位置である。勿論一場所での三役復帰を期待したい。また負け越すようなことがあれば年齢が30歳ということもあり、三役復帰はできても大関昇進に向けては厳しくなりそうだ。年齢的にも来場所は潜在能力が問われる場所となる。稽古や努力ではなく、大関に上がれる能力があるかどうか?。私としてはその部分を見極めたい。