2023年11月場所個別評価 琴ノ若

 今場所は11勝4敗の好成績で5回目の敢闘賞受賞となった。自己新となる6連勝スタートを切り、初優勝も期待できるくらいの好スタートを切った。しかし翌日からは連敗し、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は二大関と新鋭の豪ノ山相手に3連勝し、12日目は霧島との2敗対決となった。しかし寄り切りで敗れて3敗となり、優勝争いから後退した。翌13日目は竜電に敗れて4敗となり、場所後の大関昇進は厳しくなった。しかし14日目に連敗を止めると千秋楽は勝てば三賞受賞という条件付きだったが引き落としで熱海富士を破り、受賞を決めた。それ以上に来場所の大関獲りに向けて大きな11勝目となった。

 内容に関しては二本差しの相撲を中心に状況に応じて押し相撲を取ったり四つ相撲を取ったりということで柔軟な相撲を取っていた。驚いたのが3日目の明生戦である。土俵際で大逆手という13年ぶりの大技が出たが、私が語りたいのはその部分ではない。明生に左前廻しを取られた後に巻き替えられ、左を深く差されて棒立ちとなり、不利な体勢となった。しかし琴ノ若の腰が重いせいか明生がなかなか寄れない。その後明生が懸命に前に出るところを左右から振ってこらえ、最後は逆転勝ちとなった。物言いが付き、同体のようにも見えたが琴ノ若が技を仕掛けていた分琴ノ若の勝ちとなった感じである。私が言いたいのは明生が簡単に寄れないくらい琴ノ若の腰が重たくなったということである。今後は簡単に投げられて負けるといったことはなくなると思う。この相撲内容は他の上位力士はインプットしたはずである。

 霧島戦は右を差す前に左前廻しを取られ、動きを止められたのが全てである。ただ優勝争いは久々であり、三役に昇進してからは初めてである。いい勉強になったと思う。良くなかったのは翌日の竜電戦である。立ち合いからすぐに左前廻しを取られ、相手の思い通りに相撲を取られた。内容的にも前日に負けたショックを引きずっていたと見られても仕方がない。精神面も含め、課題が出た一番となった。

 さて今年の琴ノ若は1月場所で新小結となると勝ち越しを続け、9月場所で関脇に昇進した。そして全ての場所で勝ち越しており、7月場所と11月場所は11勝をマークした。結果だけを見ても力を付けてかた一年というのがよく分かる。まだ底は見せておらず、来年も非常に楽しみである。

 来場所は大関獲りの場所となるが、通常なら3場所トータル33勝が目安なので13勝が求められる。しかし協会審判部は勝数にこだわらない姿勢を見せており、12勝を挙げれば大関昇進となりそうだ。ただスムーズに昇進できるかは分からないのでまずは二桁勝利である。10勝を挙げれば次の場所のハードルが下がるので二桁勝てるかは大きなポイントである。霧島の綱取り同様、すぐに大関に昇進できるかは分からないが、近いうちには大関に上がれそうである。ということで更に力を付けての琴櫻襲名を待ちたい。