2022年7月場所を振り返って 優勝争い その7

 この時点でほぼ優勝決定戦になると私は見ていた。ただ昨日の照ノ富士の負け方が良くなかった。膝の状態は決して良くなく、貴景勝にも勝機はあると思っていた。また貴景勝は優勝の可能性はなくなったものの、目の前の一番に集中するタイプであり、モチベーションが一気に下がるような性格の力士ではない。

 そして逸ノ城にとっては貴景勝に勝ってほしいというのが本音だったと思う。確かに膝の状態は良くないが相手は横綱である。しかも本割では逸ノ城が勝っており、その結果を踏まえて対策を練ってくるのは当然である。おそらく返り討ちをする自信はなかったのではないだろうか。

 そんな中での結びの一番となったが立ち合いで貴景勝が頭からぶつかるとすぐに右からいなした。一方の照ノ富士は立ち合いで当たり負けし、四つに組み止められない。その後はお互いに見合う形となり、貴景勝が頭から何度もぶつかり、照ノ富士は相手の出方を見ながら貴景勝のぶちかましを受け止め、捕まえようとしていた。先場所までならこの体勢になった時点で横綱の方が圧倒的有利である。しかし今場所は今まで以上に膝の状態が良くない。貴景勝のぶちかましに少しずつ後退し、土俵際に押し込まれた。そして照ノ富士が左から抱えに来たところを貴景勝がタイミング良く押すと照ノ富士の左足が土俵を割った。この瞬間、逸ノ城の初優勝が決まった。

続く