2022年1月場所個別評価 御嶽海

 今場所は13勝2敗の成績で3度目の優勝を果たすと同時に3回目の技能賞を受賞した。前半戦は初優勝をした2018年7月場所以来となる初日からの8連勝で中日勝ち越しを決めた。しかし10日目に北勝富士に敗れて初黒星。翌11日目は正代に勝ち、10勝目を挙げた。また自身初となる三役での2場所連続2桁勝利となった。12日目は阿武咲に敗れて2敗となったが13日目は阿炎との2敗同士の対決を制すると14日目は宝富士を破り12勝目を挙げた。また照ノ富士が敗れたため、千秋楽を前に再び単独トップに立った。そして千秋楽は優勝と同時に大関昇進が懸かる大一番となったが照ノ富士を寄り切りで破り、優勝と大関の両方を手繰り寄せた。ちなみに協会審判部は公言しなかっただけで千秋楽の結果に関わらず臨時理事会の招集を決めていたみたいだ。確かに来場所は両大関がカド番となり、どちらも負け越せば5月場所の大関が空位になる可能性もある。本人の頑張りは認めなければならないが、大関昇進に向けて追い風が吹いたことも否定できない。そして場所後の1月26日の番付編成会議で晴れて新大関・御嶽海が誕生した。

 内容に関してはハズ押しを主体とした押し相撲に安定感があった。中でも印象に残ったのが3日目の若隆景戦と13日目の阿炎戦である。若隆景戦は先場所は負けており、今場所はどう相撲を取るのか注目していた。相撲は立ち合いで若隆景が左へ変化しながら左上手を取ると同時に右を差し、得意の四つに組んだ。しかし御嶽海は動じない。右下手を取り、下手投げを打つと左から強烈におっつけて相手の右を殺し、相手の上体が起きたところを寄り切った。先場所は半身の形にさせられたが今場所は相手を正面に置き、危なげなく料理した。13日目の阿炎戦は負けた翌日ということで精神面が問われる一番でもあった。しかし相撲は鋭く踏み込むと阿炎のもろ手突きに対して逆に押し込み、最後は相手が引いてきたところを押し出した。役力士として阿炎のもろ手突きを受け止めた上で自分の相撲を取り切った。結果だけでなく、大関昇進に向けてアピールになったのは言うまでもない。

 負けた相撲に関しては北勝富士戦に関しては相手は同学年であり、長年のライバルである。御嶽海がどうというよりも北勝富士が最高の立ち合いをし、最高の相撲を取ったということだと思う。また阿武咲戦も相手が最高の立ち合いをし、足が揃ったところを引き落とされた。阿武咲にとっては思い描いていた通りの相撲だったと言える。どちらも負けたとはいえ、先場所のように御嶽海の気持ちが切れたという内容ではなかった。相撲は相手あってのものであり、負けることもある。私は精神面が成長したと見たい。

 さて来場所は新大関となるが先程触れたように二大関がカド番であり、その意味でも御嶽海にかかる期待は大きい。大関に昇進したばかりだがもう一つ上を目指してという声が出てきてもおかしくない状況である。勿論その資質は持っていると思う。貴景勝と比べれば背は高く、一応四つ相撲も取れる。しかし横綱となると私はまだ厳しいと見ている。理由は2つある。1つ目は先程述べたが三役での2場所連続2桁勝利は今回が初めてということである。以前は豪栄道が2場所連続2桁勝利を挙げられないまま大関に昇進したが、大関の地位は5年以上守ったものの、何度もカド番を迎えては乗り越えていた記憶がある。御嶽海も豪栄道と同じような道を歩む可能性は十分考えられる。もう1つは意欲の問題である。上位力士でいえば照ノ富士や貴景勝はモチベーションが高く、その意識の下で稽古に取り組んでいるものと思われる。しかし御嶽海は良くも悪くも上を目指そうという意欲が少なくとも私からは感じられない。マイペースな性格は御嶽海の持ち味でもあるが、横綱ということを視野に入れるのであれば意識の変化は必要不可欠である。

 まずは今まで口癖で言っていたように2桁勝利を挙げ、確実に大関としての役割を果たしてほしいところだ。対戦相手は目の色を変えてくると思うが、自分の相撲を取った上で安定した成績を残したい。またそれができれば上を目指せる状況になると思うので今後に期待したい。