2025年5月場所個別評価 若隆景

 今場所は12勝3敗の好成績で3場所ぶり6度目の技能賞を受賞した。黒星スタートも2日目からは連勝し、前半戦は7勝1敗で折り返した。そして後半戦は9日目は阿炎に敗れて2敗目となった。その後11日目の大の里戦は二本差したものの大の里に上手を取られ、最後は寄り倒されて3敗目となった。勝っていれば優勝の可能性もあっただけに痛い黒星となった。しかし終盤は4連勝し、12勝で場所を終えた。

 内容に関しては低くて鋭い当たりからの前に出る相撲で白星を挙げていた。私的には2日目の玉鷲戦が分岐点だったと見ている。当たった後一気に押し込まれたものの、土俵際でしぶとく右に回り込んでの肩透かしで這わせた。取組後は「立ち合い負けしました」と語っており、負けてもおかしくない内容だった。しかし初白星を境に相撲内容が良くなり、立ち合いの当たりも強くなった。

 3日目の琴櫻戦は当たってすぐにおっつけながら右下手を取った。琴櫻に右下手を取られたものの前に出ながら琴櫻の右下手を切ると頭を付けた。それと同時に右下手を離し、ハズに切り替えているのがまさに技能相撲である。なかなかできることではない。その後前に出ながら右下手を取り、左上手を取って寄り立てた。体格差があり、一旦は残されたものの最後はあおって寄り切った。5日目の霧島戦は当たって右差しを狙ったものの霧島に左からおっつけられた後左を差された。そして右は上手を取っていたものの霧島に差された上に下手を取られ、苦しい体勢になった。その後霧島に寄られたものの土俵際で右首投げを見せ、裏返しにした。今場所の好調ぶりを象徴するような一番だった。10日目の安青錦戦は押し合いから機を見て右をのぞかせると安青錦が前に出てきたところを肩透かしで這わせた。新鋭相手に技量の違いを見せつけた。また12日目からの4連勝は対戦相手を見れば当然と言えるが、それでも白星を並べられるのは地力がある証拠である。

 関脇2人が勝ち越しており、普通なら小結に留められるところである。しかし12勝であり、関脇となる可能性が高いと見ている。勿論大関昇進への起点を作った訳だが、来場所は二桁勝てるかが焦点となる。また二桁勝てば今場所の12勝が生きてくるので大関昇進に向けては非常に大事な場所である。相撲内容に関しては今場所のように鋭い当たりをコンスタントに繰り出せるかどうか?。体重136キロの軽量力士なので、できなければ一気に押し込まれることも考えられる。相撲の上手さは持っており、立ち合いの当たりがポイントになる。大関獲りに向けては大栄翔、霧島がライバルであり、その意味では試金石となりそうだ。