2021年9月場所を振り返って 優勝争い その2

 そして10日目、11日目と照ノ富士は連勝したものの、いずれも長い相撲となった。特に11日目の高安戦は膝がしっかり曲がっておらず、腰高になっており、何とか勝ったという相撲内容だった。この時点で既に膝に疲れが溜まっていたのかもしれない。

 12日目の明生戦は立ち合いの踏み込みが全くなかった。逆に明生に突き起こされて右を差され、投げを打たれながら土俵を割った。これも完敗という内容だった。またいつもなら差したところで極めるのが得意な照ノ富士だが、その動きも全く見られなかった。これで2敗となったが9日目同様妙義龍も敗れ、単独トップは守った。12日目終了時点で先頭は2敗の照ノ富士、そして3敗で平幕の阿武咲、隠岐の海、妙義龍、遠藤の4人が追いかける展開となった。3敗に役力士はいないものの、平幕力士にも優勝の可能性が出てきたという意味で少しだけ面白くなった。

 13日目は照ノ富士は御嶽海戦だった。立ち合いから押し込まれたものの、左を差して御嶽海の動きを止めた。そして最後は右上手を取り、慎重に寄り切った。連敗はしなかった。3敗の4人は隠岐の海が敗れて4敗となり、3人が追いかける展開となった。

 14日目。3敗の平幕3人が全て敗れ、照ノ富士が勝てば千秋楽を待たずして照ノ富士の優勝が決まる。また3敗の3人がいずれも役力士との対戦ということで非常に分かりやすい構図になった。そして予想はしていたが遠藤は逸ノ城に、そして阿武咲は明生に敗れて4敗となり、優勝争いから大きく後退した。そして同じく3敗で土俵下に控える妙義龍の表情も硬い。緊張しているのは明らかである。妙義龍を見て私は今日照ノ富士が優勝を決めるだろうと思っていた。妙義龍の対戦相手は正代である。頼りないとはいえ、大関は大関である。一方妙義龍は34歳のベテランである。実績はあるものの、最近は少し低迷している。しかし優勝争いが千秋楽に持ち越しとなるかどうかという点では観ている方にとっては非常に大事な一番である。相撲は妙義龍が正代のかち上げをかいくぐり、左前廻しを取ると一気に寄り切った。押し相撲が主体の妙義龍が左前廻しを取りに行ったのも驚きだった。立ち合いの踏み込みが鋭かったのもあるが、作戦が上手くハマった感もある。いずれにしてもこの勝利で自身の優勝の可能性をつなぐと同時に照ノ富士の優勝は千秋楽に持ち越しとなった。ファンの興味を引き延ばすという意味でも妙義龍が勝ったのは大きい。一方負けた正代は大関という立場を考えれば情けないの一言である。

続く