叔父に追いつけ!豊昇龍 入門前~幕下時代

 7月場所は白鵬が優勝し、世代交代が進みそうでなかなか進まないが、若手力士で先頭を走っているのが豊昇龍である。叔父は元横綱朝青龍であり、負けん気の強さは叔父にそっくりである。それでは豊昇龍を紹介したい。

 豊昇龍はモンゴル出身で立浪部屋所属であり、年齢は22歳である。モンゴルの中等教育を卒業後、レスリングの選手としてスカウトを受け、日本大学柏高校に進学した。その後高校1年の5月に相撲に興味を持ち、朝青龍と相談してレスリングを辞めて相撲を始めることを決意した。相撲経験はなかったが、アマチュアの大会で好成績を残し、卒業後は立浪部屋へ入門した。初土俵は2018年1月場所である。その後は同年5月場所に序二段優勝を果たすなど序ノ口、序二段、三段目は一場所で通過し、同年9月場所に幕下に昇進した。

 幕下に昇進しても勢いは止まらず勝ち越しを続け、2019年3月場所は幕下15枚目以内となる西7枚目となった。十両昇進に向けて大抵の力士が苦労する番付だが幕下上位でも2場所連続で勝ち越し、同年7月場所は西2枚目まで番付を上げた。勝ち越せば十両昇進が見えてくる位置である。7月場所は3勝3敗で7番相撲となったが7番相撲で敗れ、自身初の負け越しと同時に十両昇進もお預けとなった。しかし翌9月場所は4勝3敗で勝ち越し、場所後の番付編成会議で、翌11月場所での十両昇進が決定した。

 幕下で印象に残っている相撲が2番ある。1番目は同年7月場所14日目の玉木戦である。勝ち越しと同時に十両昇進が懸かっていたが叩き込みで敗れ、取組後は土俵を叩いて悔しがった。本来なら土俵上で感情を表に出してはいけないのだが、叔父譲りの勝利への執着心がそうさせたのだと思う。

 2番目は同年1月場所10日目の宇良戦である。攻め込まれ、引いた後に足を掛け、逆方向に振る形で掛け投げで勝った。しかし負けた宇良は右膝を強打。しかも古傷である。自力で歩行できなくなり、取組後謝罪に行ったようである。宇良は笑顔で応えたものの、結局その後4場所休場を余儀なくされた。観た時は古傷であり、宇良の土俵人生が終わったと思ったが不屈の闘志で幕内に復帰した。宇良は勿論凄いが、怪我をさせた豊昇龍も胸をなでおろしているのではないだろうか。それでも宇良戦の豊昇龍の相撲は反則ではないものの、相撲ではありえない動きである。勝つためには手段を選ばずといった相撲内容であり、荒っぽい相撲だったことは否定できない。玉木戦同様、勝利への執着心が導いた結果だと思う。この2番に限らず、幕下時代の豊昇龍は時々こういった荒々しい相撲を取っていた。幕下以下は一場所原則七番であり、一番の重みが分かっているからこそ激しい動きになったのかもしれない。

続く