2021年3月場所個別評価 隆の勝

 今場所は8勝7敗で勝ち越した。6日目までは5勝1敗と好調だったが7日目から連敗。そして10日目からは4連敗し、勝ち越しに向けて後がなくなった。しかし終盤は連勝し、千秋楽に勝ち越しを決めた。

 序盤は好スタートを切ったので2桁勝利を期待したが8勝に終わったのは個人的には残念である。隆の勝はどちらかと言えば上位力士には強く、平幕には弱いタイプの力士だが今場所は始めは平幕相手に白星を重ねたので少し期待していた。しかしその後連敗した上に10日目からの大関戦と照ノ富士戦には3連敗し、内容的にもいいところがなかった。本人は場所後に精神面を課題に挙げていたが、私はこれが現在の実力だと思っている。つまり2桁勝てないのも実力。一方追い込まれながら負け越さなかったのも実力である。

 内容に関しては低い重心が保てていた時は押し相撲で白星を挙げていた。一方上体を起こされた時は負けることが多かった。押し相撲が得意だが個人的には右を差しての相撲に磨きをかけてほしい。右を差すと相手が諦めてあっさり土俵を割ることが多い。それだけ攻めが強烈ということである。また左からのおっつけが強いのもポイントである。そして負ける時は大抵上体を起こされるか、激しい押し合いの相撲になった時である。以前よりは長い相撲が取れるようになってきているが、それでも下半身が少し硬いので攻防のある相撲は避けたい。相手を正面に置いての押し相撲が理想である。

 来場所に関してはやはり2桁勝利を挙げ、大関昇進への起点を作りたい。そして照ノ富士が大関に復帰したので4大関となった。貴景勝は同部屋で対戦はないのでこれからは3人と対戦することになる。上を目指すのなら3人のうち1人は倒したいところだ。何とかもう1段レベルを上げ、大関獲りを視野に入れられる成績を残したい。