2021年7月場所個別評価 琴ノ若

 今場所は西前頭11枚目だったが12勝3敗の好成績で初の敢闘賞を受賞した。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目に早々と勝ち越しを決めた。11日目は志摩ノ海に敗れ、3敗となったが12日目からは再び連勝した。そして千秋楽は勝てば三賞受賞という条件付きだったが剣翔を寄り切りで破り、嬉しい初三賞となった。

 内容に関してはいつものように対戦相手によって四つ相撲と押し相撲を使い分けていた。また右四つが得意だが栃ノ心のようにがっちり組み止めるのではなく、体の柔らかさを活かして柔軟な相撲が取れるタイプである。そして投げ技も持っており、立派な体格の割には器用である。個人的に気に入っているのが勝負を付ける早さである。琴ノ若は身長188センチ、体重173キロの立派な体格をしているが、こういった力士は得てして相撲が長くなる傾向がある。現佐渡ヶ嶽親方であり、父である元関脇琴ノ若は相撲が長いことから「ミスター3分」と呼ばれていた。しかし琴ノ若は勝負処でしっかり前に出る厳しさを持っている。よって長い相撲になることは少ない。この部分は祖父の元横綱琴櫻から受け継がれているものと思われる。

 取組に関しては8日目の千代ノ皇戦は勿体無かった。土俵際で千代ノ皇が少し呼び込む形で上手投げにいったところを一気に前に出た。軍配は琴ノ若に上がったが物言いが付き、投げの打ち合いで琴ノ若の左手が付くのが僅かに早く、千代ノ皇の勝ちとなった。勝負処は悪くなかったと思うが、やはり右の相四つ同士で先に左上手を取られたのが敗因である。結局最後まで左上手を切れず、また左上手も取れなかった。今後に向けて課題の残る一番となった。一方14日目の宝富士戦は相手得意の左四つとなり、がっぷり四つとなったが宝富士が前に出たところを右から振って体を入れ替えるとそのまま寄り切った。宝富士は左四つのスペシャリストであり、相手十分になりながらも勝てたのは自信になったと思う。また体を入れ替えたという部分では背中の柔らかさが活きた一番だった。

 9月場所は自己最高位を更新し、西前頭3枚目となった。初の上位総当たりの番付となり、今から楽しみである。やはり課題は立ち合いの当たりである。元大関琴奨菊の秀ノ山親方から指導されているようだが、五分で当たれれば体の柔らかさが活きてきそうである。しかし立ち合い負けすれば相撲を取らせてもらえない可能性もある。それでも幕内は7場所務めており、少しずつ力を付けているのは確かである。豊昇龍のようにいきなり大関撃破となるのか?。それとも琴勝峰のように全く歯が立たずに跳ね返されるのか?。23歳と若く、来場所が全てではないものの試金石となりそうである。