2021年1月場所個別評価 貴景勝

 綱取りの場所だったが2勝8敗5休という成績に終わり、3月場所は3度目のカド番となった。今場所も両横綱が休場ということで綱取りに向けては高いレベルでの優勝が求められたが初日から4連敗し、綱取りの可能性が早々と消えた。5日目にようやく初白星を挙げるも調子が上がらず、10日目から休場となった。

 内容に関しては立ち合いはまずまず当たれていたものの、二の矢、三の矢の押しが弱く、相手を押し込めていなかった。二の矢、三の矢で相手を土俵際まで押し込むのが貴景勝の相撲なので押し込めないと相撲自体が苦しくなる。やはりポイントは初日の御嶽海戦だったと思う。立ち合いから突き放すも御嶽海に下からあてがわれた。先に引いたのは御嶽海だったが右に回り込まれ、体を入れ替えられると引いたところをつけ込まれ、押し出された。結局御嶽海の低い重心を崩すことができなかった。我慢できずに引いたのは悪いとは言わないが、貴景勝にとって嫌な負け方だったのは確かである。精神的なダメージも大きく、2日目以降は歯車が狂ってしまった。平幕相手でも押し切れず、土俵中央での攻防になった。これでは背が低く、手足の短い貴景勝にとっては苦しい相撲になる。押し込めないので引き技やいなしも効かない。休場の理由は3日目の北勝富士戦で左足首を痛めたことだが、攻めきれなかったのが怪我につながるといった内容だった。こうなっては押し相撲力士にとってはどうしようもない。

 3月場所に向けては2月2日から稽古を再開したみたいだ。また痛めた左足首の回復具合を見ながら20日から始まる合同稽古に参加するか決めるみたいだ。あとは部屋が現在の台東区から板橋区に移転する。綱取りを逃したこともあり、心機一転となりそうである。まずはカド番を脱出し、優勝争いに加わりたいところだ。そして優勝し、2度目の綱取りを期待したい。また1月場所のことは忘れ、気持ちを切り替えて3月場所に臨んでほしい。