2024年5月場所個別評価 高安

 今場所は東前頭3枚目だったが7勝3敗5休という成績だった。連勝スタートも3日目の朝稽古でぎっくり腰となり、3日目から休場した。しかし9日目から再出場すると豊昇龍、琴櫻を相次いで倒し、存在感を見せた。13日目から連敗して勝ち越しは逃したものの、優勝した大の里や若元春にも勝っており、ベテラン健在を示した。

 内容に関しては自分の相撲と言うよりも、相手の弱点を突くような相撲を取っており、嫌らしい相撲を見せていた。2日目の大の里戦は立ち合いで頭からぶつかり、大の里の出足を止めた。その後大の里に右上手を取られるも右へ回り込み、右上手を切った。その後大の里が引いたところを相手を見ながら落ち着いて押し、大の里は左へ回り込もうとしたが、その際に右足が土俵を割った。素晴らしかったのは距離感である。頭を付け、押しながらというよりも手を出しながら大の里の出方をうかがっていた。これぞベテランといった取り口であり、大の里に力を出させなかった。9日目の豊昇龍戦はもろ手突きからすぐに左を差すと豊昇龍の小手投げをこらえ、そのままの流れで腕を返しての掬い投げで裏返しにした。相手の動きを見ながらとっさに左を差したのは見事としか言いようがない。10日目の琴櫻戦は立ち合いで当たり勝ち、もろ差しを許さなかった。その後は攻防の後右四つに組み合った。琴櫻の組み手だが高安が左上手を取って寄るも琴櫻がこらえた。そして琴櫻が左を巻き替えて前に出たところを体を開いての上手投げでねじ伏せた。取組後高安は「思い通りにいきませんでした」と語っていたが、琴櫻が寄った際に左足を琴櫻の両足の間に入れており、入れていなければそのまま寄り切られた可能性もあった。このあたりは流石である。

 これで対豊昇龍戦は9勝2敗と大幅にリードしており、琴櫻戦も4勝4敗の五分となった。大の里も初顔で負けており、高安が万全な状態であればという条件は付くものの、3人にとっては今後も厄介な存在として立ちはだかりそうである。経験を生かした相撲を取っており、経験の少ない若手力士にとっては高いハードルである。

 7月場所は再度上位陣を苦しめる相撲を期待したい。皆勤して欲しい気持ちは山々だが、元々が腰痛持ちであり、長い相撲も多いので諸刃の剣である。よって腰痛が出ないことを祈るしかない。今後も若手力士の壁となり、苦しめそうである。