2020年11月場所個別評価 貴景勝

2024年5月22日

 13勝2敗の好成績で2回目の優勝を果たした。新入幕以降初となる初日からの8連勝で中日勝ち越しを決めた。9日目に翔猿に敗れて初黒星となったが10日目から再び連勝し、優勝争いをリードした。そして千秋楽は照ノ富士との直接対決だったが本割では敗れたものの気持ちを切り替え、決定戦では一方的に押し出し、優勝を決めると同時に一人大関としての役割を立派に果たした。

 内容に関しては突き押し相撲に安定感があった。また9月場所は押し相撲が多かったが今場所は突き出しで4番勝っており、相手を見ながら突く相撲が多かった。危なかったのはやはり3日目の霧馬山戦である。立ち合いで相手に少し変わり気味に左廻しを取られ、四つに組み止められた。苦しい体勢だったが土俵際で左から突き落とし、九死に一生を得た。結果的には3日目の白星の分優勝争いをリードすることができた。内容は褒められたものではないが、価値ある白星だったと思う。

 負けた相撲に関しては9日目の翔猿戦は押し返され、少し焦りが出てしまった。まともに引くも残され、逆に間隔が開いたところを叩き込まれた。翔猿は間隔と取るのが非常にうまい力士なので今後は間隔を空けない相撲を心掛けたい。そして千秋楽の照ノ富士戦は見ながら突き離したが照ノ富士の立ち合いの踏み込みが鋭かったので押し込めなかった。結果論だが決定戦のように立ち合いで頭からぶちかまさなければ勝てなかったということだと思う。貴景勝は突き押し一本の相撲なので基本的には自分の相撲に徹するだけである。勿論相手があることなので時には負けることもあるかもしれないが、それでも自分の相撲を貫くしかない。そして気持ちの強さが決定戦の相撲に表れていた。この気持ちを常に持って土俵に上がって欲しい。

 1月場所は初めての綱取りの場所になるが、私は横綱に上がる最大のチャンスだと思っている。なぜなら両横綱は連続休場し、他の2大関もカド番だからである。予測ではあるが、横綱は出てきても白鵬だけだと思う。また他の2大関は優勝以前に勝ち越さなければいけない。普通に考えれば他の上位陣は11月場所は皆勤していないので体力や筋力が落ちていると思われる。また今場所苦戦した霧馬山が11月場所は大負けしており、番付が大幅に下がるので余程のことがない限り対戦はない。霧馬山戦は初顔でも負けており、合口が良くなさそうである。どうやら13勝以上での優勝が条件となりそうだが、相撲に安定感があるのでハードルが高いとは思わない。おそらく本人も心の中では今がチャンスだと感じているはずである。また綱取りのチャンスはそう多くはないので結果を残し、上がれるときに上がっておきたいところだ。とは言っても過度に緊張しては仕方がないので自分の相撲を取ることに集中したい。そして稀勢の里以来となる日本出身の横綱誕生を期待したい。