2024年1月場所個別評価 玉鷲

 今場所は東前頭10枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は5勝3敗で折り返したが、何と言っても8日目に全勝の朝乃山を破った相撲が光った。そして後半戦は連勝し、13日目は美ノ海を押し倒しで破って勝ち越しを決めた。

 内容に関してはいつものようにぶちかましてからの押し相撲で白星を挙げていた。2日目の王鵬戦は伸び盛りの若手に引かせる相撲で押し出した。朝乃山戦は押し合いの攻防から右四つに組まれたものの右からの掬い投げで転がした。組まれた瞬間の投げ技であり、39歳とは思えない動きだった。10日目の熱海富士戦も王鵬戦同様相手に引かせ、粘られたものの最後は押し倒して裏返しにした。まだまだ若手力士の壁となって立ちはだかりそうである。

 さて私は記録に関してはあまり語らないのだが、玉鷲については語らざるを得ない。8日目で通算出場が1576回となり、歴代単独10位となった。また3月場所で幕内在位が87場所となり、若の里と並んで歴代10位となる。ちなみに去年12月に亡くなった元関脇寺尾は93場所務めており、玉鷲も鉄人の域に達している。体はまだまだ動いており、今後も記録を伸ばしていきそうだ。当の本人は記録は全く気にしていないようである。

 3月場所は西前頭7枚目となったが勝ち越しを目標に頑張って欲しい。大ベテランだが二十代の頃は十両でくすぶっており、三十代から強くなったという珍しい成長曲線を描いている力士である。本格化したのが遅かったのでまだまだ活躍が見込めそうだ。体にも張りがあり、スピードにも対応できている。また部屋には十両の玉正鳳がおり、稽古をすると同時に幕内に引き上げたい。