2023年11月場所個別評価 阿炎

 今場所は三役復帰の場所となったが6勝9敗で負け越した。前半戦は3勝5敗で折り返した。そして後半戦は10日目で7敗となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。その後は3連勝で踏ん張ったが14日目は翔猿に押し出しで敗れ、負け越しが決まった。

 内容に関しては負け越しはしたものの、モロ手突きの威力は戻ってきた印象である。豪ノ山戦、正代戦は前に出る相撲で白星を挙げていた。そして面白かったのが8日目の大栄翔戦である。「いつも見てくるんで狙っていた」ということで珍しくモロ差し狙いの立ち合いをした。狙いは果たせなかったものの効果はあり、引き落としで勝った。このように最近はモロ手突きだけでなくいろいろと考えながら相撲を取っており、まだまだ活躍できそうである。

 さて今年の阿炎は一年前の平幕優勝後平幕上位の番付で3場所連続で勝ち越し、7月場所では5場所ぶりに小結に復帰した。しかし三役定着までには至らず、三役と平幕を往復する土俵が続いている。また肘の痛みと闘った一年でもあった。秋巡業も肘が原因で休場しており、突き離せないので立ち合いから変化するといった内容も多かった。そんな中で本人なりに考えて、最善を尽くして相撲を取っていた印象である。手足が長く、スピードも速いので今後も肘の状態が鍵を握りそうである。

 来場所は再度の平幕陥落となるが一場所で三役復帰といきたい。今場所のような相撲が取れれば復帰は可能である。ただ三役に向けては豪ノ山に加えて熱海富士もライバルとなる。若手力士に負けないことが大事になってくる。能力は高く、来年は三役復帰だけでなく、三役定着の一年にしたいところだ。また元関脇寺尾の錣山親方が12月17日に死去した。ということで来場所は弔い場所となる。結果が出るに越したことはないが、元気に土俵に上がることが何よりの恩返しとなる。気持ちを整理するのは大変かもしれないが、師匠の指導方針を胸に刻み、頑張って欲しい。