2023年9月場所個別評価 獅司

 今場所は東十両8枚目であり、十両二場所目となったが9勝6敗で勝ち越した。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は10日目に7勝目を挙げるも11日目からは3連敗し、勝ち越しを前に足踏みした。しかし14日目に勝ち越しを決めると千秋楽は欧勝馬を押し出しで破り、先場所に続いて9勝で場所を終えた。

 さて獅司の紹介をしたい。獅司はウクライナ出身で雷部屋所属であり、年齢は26歳である。そして身長193センチ、体重180キロと立派な体格をしており、右四つと上手投げを得意としている。母国のウクライナはロシアに侵攻されており、その影響もあって連日大きな声援を受けている。また手足が長い上に体が柔らかいので将来が楽しみな力士である。外国人ということで相撲の取り口は発展途上といったところだが、右でも左でも上手を取れば力を発揮する。また押し相撲も取れるようになってきており、相撲の幅が広がってきているのもプラス要素である。少なくとも入幕までは見込める力士であり、努力次第ではその上も目指せる素質を持っている。

 相撲内容に関しては廻しを取ってから勝負を付けることが多かったが四つに組まずに勝った相撲もあり、自在性が出てきている。また以前より我慢することを覚え、相撲に粘りが出てきた。特に良かったのが9日目の水戸龍戦と14日目の時疾風戦である。水戸龍戦は立ち合いから離れてのいなし合いとなったが攻防の中で二本差した。しかし水戸龍は体重201キロの巨漢である。極められてどうなるかと思ったが差し手を深く差し、しゃにむに前に出た。そして前に出ながら右前廻しを取ると一気に寄り切った。普段からの稽古量と粘りが白星を呼び込んだ。時疾風戦は立ち合いで右前廻しが取れず、逆に右上手を取られて苦しい体勢となった。しかし相手の右上手投げを左掬い投げでこらえ、相手の上体が起きたところで一気に前に出て寄り倒した。我慢のしどころと勝負処が分かっているような相撲内容だった。こういった諦めない気持ちや姿勢は今後も持ち続けて欲しいところだ。

 11月場所は再度の自己最高位となり、西十両5枚目となった。幕内も視野に入る番付となるが勝ち越しを期待したい。巡業では幕内力士に勝つなど能力は持っている。課題はやはり押し相撲の強化である。相手を土俵の外に出せなくても押す力が付けば勝つ可能性が高くなる。また最近は突き押しの力士が多いので廻しを取る前に突き押しで応戦する必要がある。しかし本人もそれは分かっており、押し相撲を取れるようになってきているのは好材料である。まだまだ相撲は完成されておらず、その点では前途有望であることは間違いない。稽古と本場所の土俵で力を付け、着実に番付を上げていって欲しい。