2026年7月場所個別評価 安青錦

 今場所は関脇へ陥落し、10勝以上を挙げれば大関復帰となる場所だったが12勝3敗で3場所ぶり3回目の優勝を果たした。また4回目の技能賞を受賞した。序盤は4勝1敗で乗り切り、前半戦は7勝1敗で折り返した。ただ8日目の相撲で左足親指を痛め、上体が心配された。それでも後半戦は両横綱を倒し、11日目に10勝目を挙げて大関復帰を決めた。その後は12日目は琴勝峰に、千秋楽は熱海富士に敗れたものの先頭は譲らなかった。そして霧島と熱海富士との優勝決定巴戦を制し、3度目の優勝を決めた。

 まずは技能賞受賞について触れたい。過去1場所で大関復帰の三賞受賞はない。そのことを三賞選考委員会で記者クラブ側から質問が出た。すると浅香山審判部長(元大関・魁皇)は「技能が光ったので技能賞に価する」と説明した。それはその通りなのだが、驚異的な精神力が前例を覆したということである。私的には多少の違和感があったものの、協会側に認められての受賞であり、高く評価していたことがよく分かる。

 さて内容に関しては痛めていた左足首の状態が良くなく、よく優勝まで持って来れたものだと驚くばかりである。4日目の義ノ富士戦は逆転の上手投げで初黒星となったが左足に力が入っておらず、結果以上にこの後相撲が取れるのか心配になるレベルだった。そしてポイントは8日目の隆の勝戦だった。隆の勝に突き落とされて負けたかに見えたがその前に隆の勝が土俵を割っており、何とか白星を手にした。問題はその後である。左足親指を痛め、土俵下からしばらく立ち上がれなかった。7勝目は挙げたものの、後半戦に向けて暗雲が漂った。

 その後おかみさんが医師を東京から呼び寄せ、治療が始まった。師匠の安治川親方(元関脇・安美錦)は「(サッカーの)ワールドカップが始まるくらいまで受けていたんじゃないの」と明かした。決勝が始まったのは午前4時であり、ほとんど寝ずの治療だった。

 そして懸命な治療に見事に応えた。9日目の大の里戦、13日目の霧島戦の逆転勝ちは神懸かっていたと言っても過言ではない。また決定戦を含めて立ち合いを微妙に変えており、立ち合いを工夫したのも優勝の要因の一つである。休場の選択肢も考えていた師匠の「想像の域を超えてきた」という言葉が全てである。

 来場所に向けては痛めている左足の状態を元に戻すことが最優先である。夏巡業に参加しているが決して無理はして欲しくない。左足の状態をできるだけ上向かせた上で場所前に相撲を取る稽古ができればそれだけで十分だと思う。そして先々に向けてはやはり上を目指したい。精神面は既に備わっており、あとは体力面が備わるかどうかである。安定感はあるのであとは増量するなどして地力を付けたい。