2023年1月場所個別評価 阿炎

 今場所は東前頭3枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。初日から役力士を相手に5連勝と絶好のスタートを切った。先場所優勝の勢いをそのまま持ち込んだ内容だった。しかし6日目から4連敗すると黒星が増え、結局7勝7敗で千秋楽を迎えた。千秋楽は剣翔を突き出しで破り、ようやく勝ち越しを決めた。

 内容に関しては序盤の5日間は本当に素晴らしかった。初日の琴ノ若戦は一方的に突き出し、5日目の若隆景戦は強烈なもろ手突きに若隆景が腰から崩れ落ちた。また2日目の若元春戦は相手に左を差されたが首投げ気味の突き落としで際どい一番を拾った。しかし6日目の貴景勝戦は相手に対策を練られてしまった。もろ手突きを左からあてがわれると距離を詰められ、そのまま押し出された。翌7日目の豊昇龍戦も同じように左からあてがわれ、寄り切られた。もろ手突きは確かに阿炎の最大の武器だが、相手との距離がある程度空いていてこそ威力を発揮するものである。今場所のように距離を詰められた時にどう対処していくかという部分で大きな課題を残した。

 また気になったのが11日目の翔猿戦で勇み足で負けた相撲である。いつものようにもろ手突きで前に出るも翔猿が土俵を割る前に左足が土俵の外に出てしまった。阿炎は土俵際で回り込むのが上手く、勇み足のような単純なミスで負けるような力士ではない。あくまで推測だが、肘の痛みが原因で足まで注意が行き届いていなかったのではないかという気がする。後半戦は千秋楽を除けば勝った2番はいずれも叩き込みであり、前半戦のようなもろ手突きは影を潜めていた。千秋楽は突き出しで勝ったが翌日から休めるということで意地で相撲を取った印象がある。勝ち越しという結果は良かったものの、今後に向けては少し不安を残す内容となった。

 来場所は東前頭2枚目という番付となったが再度の勝ち越しを期待したい。しかし肘の状態が結果を大きく左右しそうである。また地力を考えれば三役復帰はできそうだが、肘の状態がよくなければ大関に向けては苦しくなる。今後も続くようであれば相撲の取り口を変える必要が出てくるかもしれない。勿論もろ手突きの相撲が一場所を通して取れればそれが一番理想ではあるのだが。