2022年5月場所個別評価 大栄翔

 今場所は11勝4敗の好成績で5回目の殊勲賞を受賞した。初日は照ノ富士を押し出しで破り、好スタートを切った。その後二大関を破る活躍で前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は9日目は霧馬山に押し出しで敗れて4敗となり、優勝争いから大きく後退した。しかし10日目からは平幕力士相手に全て白星を並べ、結果的に千秋楽まで優勝争いに残った。ただ結果論ではあるが、8日目からの連敗は少し残念だった。勝っていれば全勝と1敗力士がいなかったので優勝争いができるところだった。また対照ノ富士戦は今場所を含めて7勝5敗で勝ち越しており、3敗で止まっていれば横綱の心理面も変わっていたかもしれない。

 内容に関してはやはり初日の横綱戦は素晴らしかった。照ノ富士が立ち合いから右から抱え込みに行ったが、突き押しで一気に後退させると土俵際で右を差されたものの、馬力で構わずそのまま押し出した。照ノ富士は大栄翔ののど輪押しを警戒しつつ右から抱えて組み止める作戦に出た。しかし大栄翔はのど輪押しはせず、押して相手との間隔を詰め、逆転の余地を与えなかった。相手の出方を予測した上での相撲であり、この内容は評価したい。

 一方後半戦の連勝は琴ノ若、一山本、佐田の海など、若手力士や好成績の力士の挑戦を退けたという結果は評価できる。ただ連勝の内容のほとんどは引き技で勝っており、内容を伴った11勝とまでは言えない。当然三役での二桁勝利は素晴らしいが、大関昇進に向けてとなると、結果だけでなく、更なる内容の向上が求められる。

 7月場所は2年ぶりの関脇となりそうだが、まずは勝ち越しての三役定着といきたい。また今場所は三役での二桁勝利ということで大関昇進への起点を作った形だが、大関が本調子でなかった可能性もあり、更なるアピールが求められる。できれば優勝した頃のような一気に前に出る相撲を取って欲しい。また若手力士が力を付けてきており、今場所以上に存在感を示したいところだ。