2022年3月場所を振り返って 優勝争い その3

 14日目。高安は正代と、そして若隆景は貴景勝との取組である。また優勝の可能性は低いが御嶽海と琴ノ若の3敗同士の対戦が組まれた。まずは高安が土俵に上がった。正代は今場所はカド番だがまだ勝ち越していない。しかも前日は琴ノ若に負けたもののそれまでは6連勝しており、体の動きも良くなっている。また過去の対戦成績もリードされており、決して油断できる相手ではない。相撲は高安が立ち合いで左上手を取り、正代の寄りをこらえると一気に前に出た。土俵際まで寄り立て、勝負あったかに見えた。しかし正代が体を離し、右から掬い投げを打つと高安はたまらず土俵に転がった。高安にとっては思惑通りに相撲が取れただけに勿体無い一番だった。右は差したまま寄っており、廻しを取っていなかったのが逆転を許した原因である。できれば一呼吸置き、右廻しを取ってから前に出てほしかった。しかし高安は少々体勢が悪くともパワーで押し切るタイプの力士であり、慎重さを求めるのは高安にとっては酷かもしれない。そして結びで若隆景が土俵に上がった。高安が負けており、勝てば優勝争いのトップに並ぶという大事な一番となった。相撲は貴景勝のぶちかましからの押しで一気に後退し、叩かれるも何とか残すとそのままの流れで右を差し、左も差すと最後は寄り切った。驚くべきはその強靭な足腰である。貴景勝のぶちかましに腰が崩れながらも残したのは凄いとしか言えない。他の力士だったらまず叩きを食っていたと思う。対戦相手が体重以上に重く感じると口々に語っているが、体幹の強さは間違いなく若隆景の武器である。相撲の上手さが語られることが多いが、相撲が上手いだけの力士ではない。さてこれで千秋楽を前に優勝争いで若隆景と高安が2敗で並んだ。既に直接対決は終えており、どちらが勝つか全く分からない展開となった。また3敗同士の対決は琴ノ若が勝ち、優勝の可能性を残した。

 そして千秋楽の取組だが、千秋楽だけは14日目の全取組が終了してから割が組まれる。対戦相手が注目されたが高安は阿炎と、そして若隆景は正代との取組となった。また3敗の琴ノ若は豊昇龍との対戦となった。琴ノ若が勝ち、高安と若隆景が敗れた場合のみ、優勝決定巴戦となる。

続く