大鵬の遺伝子を持つ男 王鵬 その4

 さて1月場所は7勝8敗で負け越した。10日目に7勝目を挙げたものの結局あと1勝が届かなかった。千秋楽の佐田の海戦は相手の右差しを左からおっつけたがおっつけきれず、引いたところを二本差され、そのまま寄り倒された。前半戦に体力を消耗し、勝ち越しを前に体が動かなかったというのもあると思う。しかし大幅に番付を上げた割には能力的には通用しており、スピードにも対応できていた。思ったより頑張ったというのが私の評価である。

 今後に向けては何度か壁にぶつかるかもしれないが、王鵬なら乗り越えていけると思う。また同期の豊昇龍に早く追いつきたいところだ。豊昇龍は体重131キロの軽量ながら抜群の運動神経と足技を武器に上位力士相手に奮闘している。一方王鵬は豊昇龍のような器用さはないものの、恵まれた体格と馬力が持ち味である。また負けん気の強さを前面に押し出す豊昇龍とは違い、王鵬は闘志を内に秘めるタイプである。あらゆる部分で対照的なのが面白い。

 何より21歳の若さで新入幕となったのが大きい。やはり上を目指すという意味では若くして出世しているのは有利である。今後壁にぶつかったとしても、それを克服し、一気に飛躍する時間が残されているということである。正直大鵬と比較するのは酷かもしれない。しかし大鵬の遺伝子を持ち、祖父譲りの立派な骨格が受け継がれたのは間違いない。琴ノ若が祖父の琴櫻と比較されるのと同じである。能力だけでなく、顔や体型を祖父と重ね合わせるだけで相撲ファンとしてはたまらない。その楽しみを与えてくれた王鵬にはこちらが感謝したいくらいである。しかしいずれは豊昇龍のように平幕上位に顔を出し、上位力士と対戦するのは確かである。勿論期待しているが、それと同時に温かい目で今後を見守っていきたい。

終わり