2025年5月場所個別評価 時疾風

 今場所は東前頭13枚目であり、自己最高位だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は4日目から3連敗するなど3勝5敗で折り返した。しかし後半戦は9日目から3連勝するなど巻き返すと千秋楽は伯桜鵬を寄り切って勝ち越しを決めた。

 内容に関しては本人が語るように右上手が取れず、自分の相撲がなかなか取れなかった印象がある。それでも小手投げで3番、叩き込みで1番勝っているように動いて活路を見出していた。初日の隆の勝戦は隆の勝の左のど輪を右からあてがうと左をのぞかせ、引きに乗じて押し出した。地力強化をうかがわせる内容だった。7日目の朝紅龍戦は当たって左は差したものの右は上手が取れず、朝紅龍に左を深く差された。しかし右から抱え込むと小手投げを連発してねじ伏せた。上手投げを得意としているが投げ技自体が得意であり、驚きはない。先手先手の相撲で朝紅龍を料理した。そして14日目の遠藤戦は当たってすぐに遠藤に右前廻しを取られた。しかし時疾風の踏み込みも鋭く、右上手を取ると上手から振って右前廻しを切り、寄り切った。小兵ながら上手を取って振り回す力が強く、持ち味を発揮した一番だった。

 一方負けた相撲に関しては胸を合わされて寄り切られる内容が多かった。個人的には右上手を取るよりも相手を正面に置かない相撲を取って欲しいと思っている。横へ動くことでこういった内容を一番でも減らしたい。

 さて来場所は番付を上げるが同部屋の正代が西前頭10枚目で6勝9敗と負け越しており、初の部屋頭となりそうである。正代は元大関であり、番付で追い越すというのは本人にとって意義がありそうだ。ただ力を付けてきているので部屋頭で満足されては困る。次は上位力士と対戦できるところまで番付を上げることが目標となる。また目先の勝ち負けではなく、相撲内容に集中しているのは好感が持てる。今場所はあまり見られなかったが土俵際での回り込みが上手く、結果を出すと同時に館内を盛り上げる役割を期待したい。