2025年3月場所個別評価 草野
今場所は西十両14枚目であり、新十両の場所だったが14勝1敗という成績で新十両優勝を果たした。また史上3人目となる12日目での十両優勝を果たした。新十両優勝は2024年1月場所の尊富士以来となった。
前評判が高く、幕下最下位格から鳴り物入りでデビューした。しかし連続勝ち越しはしたものの十両昇進まで5場所を要した。また先場所は西幕下3枚目で4勝3敗であり、ギリギリでの昇進だったのは否めない。
しかし今場所はため込んだ力を一気に爆発させたかのような15日間だった。10日目に新十両の初日からの連勝記録を達成した。そして12日目の狼雅戦は優勝が懸かる大事な一番となり、緊張したようだが逆転の下手投げで破り、勝ちっぱなしでの優勝を決めた。13日目は嘉陽に敗れ、15日制定着以降で初の新十両15戦全勝は逃した。千秋楽は同郷で文徳高校の先輩にあたる藤青雲を押し出しで破るとともに14勝目となり、来場所の新入幕の可能性が出てきた。
内容に関しては右四つの相撲と押し相撲で圧倒していた。四つ相撲が得意の力士だが押し相撲得意の力士相手に押し相撲で勝っており、力の違いを見せつけた。また連続攻撃で相手に反撃の隙を与えなかった。攻めが速いという点では相撲の取り口は違うものの同部屋の尊富士と似ている。唯一の黒星となった嘉陽戦は嘉陽の回り込みとそのタイミングが非常に上手く、勝った嘉陽を褒めたい相撲である。時には負けることもあるかもしれないが、今場所のような連続攻撃を忘れて欲しくない。
また本来なら宮城野部屋に入門予定だった。しかし宮城野親方が部屋閉鎖の処分を受けたことで伊勢ヶ浜部屋へ入門することとなり、いきなり力士40人前後の大所帯でスタートとなった。角界屈指の厳しい稽古に加え、新弟子だけに稽古後の風呂や食事の時間が短い。精神的な部分もあったと思われるが体重が減り、出世にやや時間がかかった。ただ体に関しては余計な脂肪が落ち、筋肉質の体型になったように見える。ここから体重が増えてくると思うので将来が非常に楽しみである。そして伊勢ヶ浜部屋で揉まれた経験は今後必ず生きてくるはずである。
来場所は新入幕の可能性も十分あると見ている。理由は二つある。一つは千秋楽の藤青雲戦は、勝った方が来場所は新入幕という一番だったかもしれないということである。もう一つは先述の尊富士が新十両優勝を果たした次の場所に新入幕となり、新入幕優勝を成し遂げているからである。相撲内容を見ても幕内に上げても全くおかしくない。しかしいずれは入幕し、幕内の土俵に新風を吹き込むことになりそうだ。新星誕生は嬉しい限りである。
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