2025年1月場所個別評価 佐田の海

 今場所は東十両筆頭であり、20場所ぶりの十両となったが9勝6敗で勝ち越した。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦も一進一退が続き、12日目終了時点で6勝6敗ということで終盤の土俵に幕内復帰を懸けることになった。しかし終盤は普段の稽古量の差が物を言う。ベテランということで普段の稽古の成果が出た。13日目は栃大海を引っ掛けで破ると翌14日目は東白龍を送り倒しで破り、勝ち越しを決めると同時に幕内返り咲きを確実にした。

 内容に関しては右四つの相撲と前廻しを取る相撲で白星を挙げていた。確かに力量的には勝ち越しは当然である。しかし年齢は37歳であり、しかも今の十両は伸び盛りの若手力士が多い。よって1場所で幕内に復帰できなければ十両での土俵が続くことも十分考えられる。苦戦した印象はあるが、最後は地力の高さを示した。

 やはり語るべきは終盤の相撲である。栃大海戦は突き押しで攻め立てられた上に張り手を食らうなど劣勢の展開となった。しかし最後は右のど輪で押し込まれたが左からの引っ掛けで逆転勝ちした。栃大海の攻めも素晴らしかったが、相手の攻めを受けながら粘り強い相撲を取った。好内容の一番だった。東白龍戦は当たってすぐに東白龍が左へ動くと体が泳ぎ、背中を向けた。万事休すかと思われたが佐田の海にはスピードがある。土俵際で左に動くと今度は東白龍の後ろに付き、送り倒した。時間は短かったが目まぐるしい相撲だった。また東白龍の引き技は絶妙であり、十両力士はその洗礼を受けている。そしてまんまと引っ掛かったがスピードで対応した。東白龍の相撲は端から見れば相手をだます相撲であり、取組後土俵下で座り込む東白龍を少しだけ睨みつけた表情が面白かった。

 さて3月場所は再入幕となるが、朝紅龍、獅司、安青錦といった若手力士も入幕となる。よって若手力士に勝てるかどうかが勝ち越しに向けては大きなポイントとなりそうだ。その一方で幕内を10年近く務めており、経験を生かせるというメリットもある。年齢的にも再度十両に落ちれば苦しくなるのは目に見えており、再度の勝ち越しを期待したい。