2021年3月場所を振り返って 両横綱について

 大相撲春場所は関脇照ノ富士が12勝3敗という成績で3度目の優勝を果たすと同時に21場所ぶりの大関復帰を決めた。一時は序二段まで番付を下げながら大関復帰にこぎつけたのは本当に素晴らしい。しかし優勝に関しては照ノ富士が優勝したというよりも高安が優勝を逃したという印象のほうが強い。それでは春場所を振り返っていきたい。

 場所前の注目は横綱が出場するかどうかだったが白鵬は出場してきたが鶴竜は休場した。鶴竜の休場に関しては師匠の陸奥親方が説得するも本人の現役続行への意志は固く、5場所連続休場となった。一方の白鵬は初日から連勝するも右膝の状態が思わしくなく、3日目から休場した。これに激怒したのが横審と協会幹部である。横綱審議委員会は新型コロナの影響で場所後の開催が未定だったが緊急事態宣言の解除を理由に場所後の開催を決めた。また白鵬は8日目に右膝の手術を受けたが5月場所は休場し、7月場所に進退を懸けるというコメントが横審や協会幹部の怒りに火を点けた。休場が続いているのに何で勝手に予定を決めているのかという話である。そして横審と協会幹部の「物言い」が意外な方向に展開した。場所11日目の3月24日に鶴竜が引退を表明した。鶴竜は「物言い」を重く受け止め、場所後の横綱審議委員会で引退勧告される可能性もあったので引退勧告する前に自ら身を引いたということだと思う。しかし休場した横綱が場所の後半に引退を表明するというのは自分の記憶にはない。横審や協会幹部の発言を受け、考えた上での決断だったと言える。

 そして注目は一人横綱となった白鵬の処遇へと移った。3月29日に横綱審議委員会が開催されたが昨年11月場所後の会合で出した「注意」の決議を継続することを決めた。そして7月場所の結果によっては「引退勧告」が決議される可能性にも言及した。また7月場所の「結果」のラインに関しては具体的な数字に関しては言及を避けた。私的には妥当な判断だと思うが、現時点では白鵬に代わる若手力士が育っておらず、何とも悩ましいところである。今のままでは白鵬が引退すると横綱不在となる可能性が非常に高い。それは口には出せないが、横審としてはできれば避けたいのではないだろうか。そうなると横審が引退勧告を突き付けるというより、白鵬本人の決断を待つということになりそうだ。いずれにしても鶴竜が引退し、新たな局面を迎えたのは確かである。しかし3月場所を見た限りでは白鵬に期待するのはさすがに厳しそうである。あとは今後の状況次第で決まってくるというところだと思う。ファンとしては成り行きを見守るしかない。