なぜ炎鵬は関取復帰できたのか? 2020年1月場所12日目の高安戦

 頭脳的な取り口で観客を沸かせてきたが、私が真っ先に思い浮かんだのがこの取組である。相撲は突っ張り合いから左をのぞかせると頭を付けた。一方高安は左差しを右から抱え、炎鵬の動きを止めようとした。すると炎鵬は左へ回り込んで左の差し手を抜いた。そして一旦離れたものの再度高安の懐に入り、左を差して頭を付けた。すると高安は右上手を取り、炎鵬の動きを止めた。炎鵬は頭は付けており、右から高安の左を絞っていたものの、やや勝手が悪い形に見えた。勝つには左から捻って投げるしかないといった体勢だった。すると炎鵬は機を見て掴んでいた高安の左手首を離すと右で前廻しを取った。最後は投げの打ち合いとなり、下手投げで高安を引きずるような形で這わせた。

 凄いと思ったのは最後の部分である。下手投げは下手投げなのだが、最後は廻しを離している。そして廻しを離した勢いで高安を這わせたように見えた。普通なら廻しを取ったら離さないのがセオリーである。しかしセオリーとは逆のことをして投げ技を決めた。仮に廻しを離していなければ高安の上手投げが決まっていた可能性もあったと見ている。

 おそらくそこまで考え尽くしての下手投げだったと思う。私が観た限りにおいてはこのような投げ技は観たことがなく、驚いたというのが正直なところである。そしてこの取組以降は小兵力士が炎鵬のような投げ技を見せるようになった。まさに炎鵬オリジナルの投げ技である。本人は勝つために最善を尽くしただけかもしれないが、投げ技の新たな形を見せた相撲だった。

続く