2026年5月場所個別評価 伯乃富士

 今場所は西前頭10枚目だったが11勝4敗の好成績で2度目の敢闘賞を受賞した。黒星スタートも2日目からは3連勝し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は3連勝して11日目に勝ち越しを決めると14日目は優勝争いでトップの大関霧島を倒し、見せ場を作った。千秋楽は藤青雲を注文相撲で破り、三賞受賞を決めた。

 内容に関しては左四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていたが、1月場所で痛めた左足親指の手術明けということで本調子とは言えなかった。しかし番付が下がっており、地力の違いで結果を残したという印象である。

 特に良かったのが4日目の朝白龍戦と14日目の霧島戦である。朝白龍戦は当たって突き起こして二本差したものの朝白龍がすかさず極めて寄り詰められた。しかしのけぞりながら懸命にこらえて残すとすかさず両下手を取り、左内掛けは空振りしたものの左に振って体を入れ替えて寄り切った。取組後本人は「ウチの部屋は稽古でどんな体勢になっても、力を抜いたら怒られる。それが生きた」と語った。この部分はおそらく先代師匠から受け継がれているものと思われる。手術明けとはいえ稽古はしてきており、スタミナは十分である。そして霧島戦は左四つに組み合った後寄り詰められたものの、これまた懸命になって残すと体勢を立て直し、霧島の左上手出し投げに乗じて寄り倒した。師匠の元横綱照ノ富士の伊勢ヶ浜親方に「場所を面白くしてこい」と送り出されたが期待に見事に応えた。また両親も鳥取から両国国技館に応援に駆けつけており、勇姿を見せた。私的にはどちらの相撲も残した後の動きの速さが印象に残った。普通は残したものの負けるパターンがほとんどだが伯乃富士には当てはまらない。精神面の強さと生まれ持った相撲センスが成せる業である。おそらく霧島戦を館内で観たお客さんの大多数が満足して帰路に着いたに違いない。それくらい素晴らしい内容だった。

 11勝ということで来場所は平幕上位の番付に戻すことになる。おそらく痛めている左足親指は回復してくると思うので今場所以上に期待が持てそうだ。勿論目指すは新三役である。来場所は同部屋の義ノ富士の新三役が濃厚であり、刺激を受けているに違いない。厳しく言えばもう少し相撲に安定感が欲しい。そして安定感が出てくれば結果は自ずと後からついてくる。よって相撲内容のもうワンランクのレベルアップを私としては求めたい。