2026年5月場所個別評価 若隆景

 今場所は4場所ぶりの三役復帰となったが12勝3敗の好成績で25場所ぶり2度目の優勝を果たした。また7度目の技能賞を受賞した。

 4連勝スタートを切り、前半戦はトップタイの7勝1敗で折り返した。そして後半戦は9日目は琴勝峰に敗れると11日目の霧島との2敗対決は寄り切られて3敗に後退した。しかし翌日からは白星を並べると14日目は霧島が敗れたため再び首位に並んだ。千秋楽は勝って霧島との優勝決定戦となったが鋭い出足から一気に押し出し、優勝を決めた。

 思えば4年前の3月場所、新関脇で初優勝を果たすとその後も関脇の地位を守り、大関候補の一番手だった。しかし1年後の3月場所で右膝に重傷を負い、長期休場を余儀なくされ、幕下まで番付を下げた。大関候補から一転、どん底を味わった。しかし心強い味方がいた。師匠の元幕内蒼国来の荒汐親方である。本人は手術をためらったこともあったが師匠は迷わず手術を勧めた。そして手術をし、治療を最優先にした。それだけではない。稽古を再開してからも、相撲を取っての番数を制限した。これは復帰後も続き、相撲を取る稽古は2日に1回、番数も15番までと決められていた。

 相撲の取り口も変えた。これまでのように動き回る相撲だと膝に負担がかかる。よって膝に負担のかからない相撲、つまり少し体重を上げて、真っすぐ、どっしりとした相撲を取るようになった。これは力士としての寿命を延ばす考えもあった。勿論本人の努力もあると思う。しかし私は師匠が若隆景のことを理解した上で上手く導いた結果だと思っている。よってまずは師匠に心からおめでとうと言いたい。

 さて内容に関しては鋭い出足からのおっつけ、ハズ押し、そして前廻しの取り方が非常に素晴らしかった。またいつも以上に体にキレがあり、こちらが右ヒジの痛みを忘れてしまうくらいの動きをしていた。そして負けた相撲はいずれも相手が上手く取ったという内容であり、私的にはほぼ完璧だったと思っている。過去最強だったと言っても過言ではない。それくらい文句のつけようのない内容だった。

 三役での二桁勝利となったので大関昇進への起点を作ったことになる。しかも12勝での優勝である。これを活かさない手はない。当然ながら来場所からの2場所が大事になってくる。来場所も二桁勝利を挙げ、大関昇進への足固めをしたい。上位力士が今場所は相次いで休場しており、チャンスは十分ある。

 また場所前は元横綱三代目若乃花の花田虎上さんと対談していた。動画を見たが、花田さんのアドバイスはかなり参考になると思う。私的には若隆景の「止まった後どうすればいいか」の質問に花田さんが「止まらないようにする」と答えたのが非常に印象に残った。元横綱のアドバイスであり、取り入れられるものがあれば取り入れて欲しいと思っている。