2022年1月場所個別評価 宇良

 今場所は8勝7敗で勝ち越した。また自己最高位での勝ち越しと同時に平幕上位の番付で初めて勝ち越した。初日から役力士との対戦が続いたが3日目は貴景勝を取り直しの末押し倒した。そして前半戦は4勝4敗で折り返した。後半戦も奮闘し、13日目に7勝目を挙げると千秋楽は千代丸を押し倒しで破り、嬉しい勝ち越しを決めた。

 内容に関しては色々仕掛けてくるイメージが強いが、決まり手としては8日目の隆の勝戦で足取りで勝った一番を除けば全て前に出る相撲で勝っている。押されにくくなっただけでなく、自ら前に出て勝てる相撲が増えたので相撲に安定感が出てきている。特に後半戦は番付が下位の力士との対戦があったが、奇襲を繰り出すまでもなく、前に出る相撲で白星を挙げていた。増量に伴い、実力が付いてきているのは明らかである。

 相撲に関してはやはり3日目の貴景勝戦が光った。特に良かったのが最初の一番である。貴景勝の突き押しに応戦し、回り込みながら残すと貴景勝の右からのいなしに乗じて右前廻しを取った。その後左前廻しも取ると右から捻り、今度は頭を付けて一気に前に出たが貴景勝が左から突き落としを見せ、軍配は貴景勝に上がった。そして長い協議の末取り直しとなったが宇良は勝ったと思ったのか審判長の説明後は悔しそうな表情を見せた。しかしこの時点で貴景勝は右足首を痛めた上に息が上がっており、取り直しの一番は相撲を取る前から勝負が付いていた。大関に勝ったというだけでなく、貴景勝から前廻しが取れたという意味でも今後の自信にしてほしい。また翌4日目の照ノ富士戦も照ノ富士に寄られたところで懐に入り、土俵際まで寄り立てるなど見せ場を作った。タイミング良く相手の懐に入るスピードは今後も武器となりそうだ。

 一方苦言を呈したいのが2日目の正代戦である。押し込まれ、結果としては押し出されて負けたが土俵際で正代の左手を手繰っていた。宇良はどう考えても残せない体勢であり、正代を道連れにしているようにも見えた。正代は上手く受け身を取り、怪我は免れた。しかし相手は大関である。宇良と同等の立場ではない。今後は看板力士に敬意を払って相撲を取って欲しい。少なくとも看板力士を意図的な形で怪我をさせるようなことはあってはならない。

 さて来場所は番付を上げるが新三役までは厳しそうである。しかし新三役に向けて可能性が膨らんできたのは確かである。勝ち越しを目標に頑張って欲しい。また今場所は貴景勝だけでなく、役力士に関しては隆の勝と大栄翔にも勝っている。もちろん圧力負けした相撲もあったが気にする必要はない。相手を警戒させ、上手く懐に入り込むような相撲を今後も期待したい。