2022年1月場所個別評価 若隆景

 今場所は9勝6敗で勝ち越した。来場所の三役復帰は確実である。初日から上位力士との対戦が続き、4連敗スタートとなった。ただ4日目の正代戦は自らの勇み足であり、相撲は勝っていただけに悔しい一番だったと思う。それでも気持ちを切り替え、後に引きずらないのが若隆景の凄さである。前半戦を3勝5敗で折り返すと後半戦は10日目の黒星を最後に11日目からは白星を並べた。千秋楽は阿武咲に押し込まれたが土俵際の肩透かしで9勝目を挙げた。この9勝目は非常に大きかったと思う。また先場所は西筆頭で8勝7敗で勝ち越したにも関わらず三役に復帰できなかった。しかし番付運のなさを実力で跳ね返した。見事としか言いようがない。

 素晴らしかったのは結果だけではない。内容も伴っていた。5日目の隆の勝戦は立ち合いから押し込まれるも逆に押し返しての突き落としで初白星を挙げた。9日目の玉鷲戦は相手の突き押しを下からあてがい、距離を詰めて押し出した。対玉鷲戦はこれで負けなしの4連勝となった。そして特に素晴らしかったのは8日目の逸ノ城戦と13日目の遠藤戦である。逸ノ城戦は同じ右四つが得意ではあるが体格が違う。立ち合いから右を差し、左はおっつけて相手の右を殺すも長い相撲となった。そして最後は逸ノ城が左を抱えて前に出てきたところを土俵際で左から突き落とした。最後は左廻しを取る動きも見せたが、とっさに突き落としに切り替えた判断力はさすがである。また左から突き落としてはいるが体は開いていない。体重127キロの軽量力士だが、体幹の強さを証明した一番でもあった。そして遠藤戦は押し込むも遠藤に回り込まれながら右を手繰られ、遠藤得意の左差しを許し、寄り立てられた。しかし右上手を取って残すと頭を付け、長い相撲となった。最後は右から出し投げを打つと遠藤がそれを嫌がり、引いたところを寄り切った。得意とは言えない右上手でどうかと思ったが、技は多彩である。また自ら有利な体勢を作るだけでなく、相手が嫌がる相撲が取れる力士である。

 来場所は三役復帰となるが、小結ではなく、新関脇昇進となりそうだ。プレッシャーはあるかもしれないが、平幕上位で3場所連続で勝ち越しており、既に実力は備わっている。あとは三役で初めての勝ち越しといきたい。そして本人が口にしていたのが三役定着である。既に先を見据えて立ち合いの当たりを強化する稽古をしているようだ。また今場所は立ち合いから変化した相撲は一番もなかった。三役定着に向けた強い意志の表れだと私は見ている。そして期待したいのは照ノ富士戦である。直近は7連敗しており、今場所は左前廻しを取りにいくも取らせてもらえなかった。いろいろ考えているのは分かるので、次はどんな作戦に出るのか注目したい。善戦はしているのでそろそろ対横綱戦初勝利といきたいところだ。