2025年7月場所個別評価 大の里

 今場所は新横綱の場所だったが11勝4敗という成績だった。3連勝スタートも4日目は王鵬に押し出しで敗れ、初黒星とともに初金星を配給した。その後8日目は伯桜鵬に押し出され、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目は40歳の玉鷲に突き落とされ、最年長金星を献上した。その後13日目は優勝争いで先頭を走る琴勝峰に上手投げで敗れて4敗となり、優勝争いから脱落した。

 内容に関しては勝った相撲は出足で圧倒したものの、負けた相撲は安易な引き技での黒星が多く、改めて課題が出た場所となった。確かに引き癖が良くないのは明らかである。しかし大の里は私が観た限りの横綱では相撲の完成度は一番低い。その上体も締まっておらず、未完成であることは明らかである。よって引き癖が直り、体に筋肉が付いて完成されれば過去にはいないとんでもない横綱になる可能性を秘めている。そしてそうなる確率は非常に高いと見ている。私的には引いて墓穴を掘る姿を今のうちに楽しんでおこうと思っている。

 また横綱として千秋楽まで優勝争いに絡めず、4敗が全て金星による配給というのもいただけない。ただ5日目から豊昇龍が休場し、一人横綱としての重圧を一身に受けることになった。また重圧により体の動きが固くなったようにも見えた。金星に関していえば裏を返せば役力士相手には全て勝っており、地力の高さを見せたという見方もできる。そして豊昇龍とは違って途中休場はせず、千秋楽まで完走した。連敗もせず、大崩れすることもなかった。そう考えれば及第点はあげていいのではないかというのが私の考えである。

 個人的に印象に残っているのが11日目の霧島戦である。右かち上げから前に出るも霧島に二本差され、絶体絶命の体勢となった。しかし右上手を取ると左からおっつけて霧島の寄りをこらえた。そして再度寄り詰められたものの右からの上手ひねりで霧島を仕留めた。不利な体勢になるとあっさり諦め、淡白な印象もあるが、この相撲だけは珍しく粘りに粘った。取組後は「不利な形になったけど、引っ張り込むのを我慢して、じっくり攻めたのが良かった」と自己分析した。また上手ひねりも狙っていたようである。「ロックしていたので封じ込めていた」と語っており、両差しを許しても極めるようにして挟みつけ、逆転のチャンスをうかがっていた。二本差された内容は良くないものの、粘っての白星は横綱とはいえ成長しているし、進化している。私的にはそれが分かって嬉しい一番だった。

 来場所は優勝した4場所中3場所で優勝している東京場所であり、優勝を期待したい。課題を修正、克服できる力士であり、強くなること以上に横綱の地位に慣れることの方が大事かもしれない。