大鵬の遺伝子を持つ男 王鵬 その2

 新十両の場所は5勝10敗と負け越し、1場所で幕下に転落した。しかし翌3月場所は勝ち越し、1場所で十両に復帰した。そして5月場所は十両で初めて勝ち越しを達成した。その後は十両に定着。同年11月場所は東十両7枚目で11勝4敗の好成績を挙げ、2022年1月場所で新入幕を果たした。さてそれでは王鵬の印象を語りたい。

 大鵬の孫ということで入門前から注目されていた。四兄弟のうち三人が入門したが、王鵬が一番注目された。そして入門時、父の元関脇貴闘力は「モノになるかどうかは五分五分」と語っていた。確かに体格には恵まれていたが体はブヨブヨした感じであり、いかにも原石といった体型をしていた。しかし祖父の大鵬同様、骨格が大きく、鍛えがいのある体格をしていたのも事実である。

 そしてこれは私が勝手に想像していたが、幕下中位~下位で揉まれて苦労すると思っていた。しかし結果としてそうはならなかった。確かに幕下上位では少し苦労したが、幕下上位は十両と大して差はない。そして若くして幕下上位に定着したということは十両がほぼ約束されたようなものである。また大相撲においては苦労して下積みをするという期間も大切である。ただ番付を上げればいいというものではない。思った以上に順調に出世し、新入幕を迎えたという感じがする。

 相撲の取り口は突き・押しを得意としているが、最近は突き・押しの流れから差して寄る相撲も増えてきた。いずれにしても馬力を前面に押し出した相撲である。一方廻しを取っての相撲は得意ではなく、その部分を含めて現時点では御嶽海の取り口に似ている。しかしまだ体全体を使い切っていない相撲が多く、観ている方からすれば少し物足りなさを感じる。逆を言えば鍛えればまだまだ伸びしろはありそうだ。勿論底は見せていない。

続く