2025年5月場所個別評価 琴櫻

 今場所は8勝7敗という成績だった。黒星スタートとなり、3日目は若隆景に敗れて早くも2敗目となった。その後は巻き返すも7日目は豪ノ山に敗れて3敗目となり、優勝が厳しくなった。前半戦を5勝3敗で折り返すと後半戦は白星を重ね、12日目に勝ち越しを決めた。しかし終盤は3連敗し、8勝で場所を終えた。

 内容に関しては立ち合いの踏み込みが甘く、それが原因で差されて後手後手に回るといった相撲が目立った。足腰が強く、技量も持っているので勝ち越す分には問題ないと思うが、それでも大関であり、8勝では物足りない。今年1月場所は豊昇龍が優勝し、場所後に横綱に昇進した。そして次の3月場所と5月場所は大の里が連覇し、5月場所後に横綱に昇進した。また直接対決はいずれも完敗という内容であり、半年で一気に力の差が広がった印象がある。しかも豊昇龍も大の里も年下ということで流れ的には二人が力を付けながら優勝争いを繰り広げると考えるのが普通である。ということで今は差がついたことを認めつつ、自分なりにテーマを持って稽古に取り組むしかない。

 ただ稽古場では同じ一門の大の里とは五分に近い星で、勝負できているようであり、上に上がる可能性が全くないとは思えない。それでも今は流れが向いている時期ではなく、我慢の時である。そしてその我慢がしばらく続くことが予想される。

 逆を言えばライバルだった二人が横綱になったことで二人を意識する必要性がなくなる。その意味では自身を見つめ直すいい機会になるかもしれない。

 来場所は序盤の取りこぼしを少なくした上で二桁勝利を期待したい。できれば前半戦は白星を並べ、両横綱に食らい付きたいところである。特に大の里の横綱昇進は悔しいかもしれないが、悔しがったところで何も始まらない。今は自身と向き合いながら大関としての役割を果たしつつ、相撲に取り組みたい。