2021年9月場所個別評価 霧馬山

 今場所は9勝6敗という成績だった。4連勝スタートとなり、2日目は貴景勝を押し出しで破った。そして前半戦は5勝3敗で折り返した。後半戦は連勝するも11日目から3連敗し、勝ち越しを前に足踏みした。しかし14日目に栃ノ心を外掛けで破って勝ち越しを決めると千秋楽も勝ち、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては左廻しを取っての相撲には安定感があった。6日目の正代戦は立ち合いからすぐに左前廻しを取り、右廻しも取ると一気に寄り切った。対正代戦初勝利となった。そして千秋楽は巨漢の千代丸を四つに組み止め、最後は吊り出した。吊り技は師匠の陸奥親方の元大関霧島が得意としていた。霧馬山も師匠同様足腰が強く、背筋も強いので吊り技を覚えてほしいところだ。相手に逆転の余地を与えないという点で非常に有効である。

 技術的には廻しを取り、頭を付けることを師匠に教え込まれているようだ。長い相撲が多いのが少し気になるが、少なくとも相手に嫌がられる相撲は取っている。身長187センチと背は高いのでもう少し体重が増えれば頭を付けずに四つに組み止める相撲が増えてきそうである。

 課題はやはり立ち合いである。7日目から連敗したが相手は押し相撲が得意の大栄翔と隆の勝だった。そしてどちらも立ち合いから押し込まれ、左の廻しを取れなかった。今後に向けてはやはり立ち合いで相手の動きを止め、左廻しは取れなくても四つに組み止める相撲を取りたい。しかし逆を言えば経験不足という部分もあり、その意味では伸びしろはありそうだ。経験を積みながら強くなっていってほしい。

 11月場所は西小結となり、新三役となった。三役に上がれる力はあると思っていたので私的には特に驚きはない。そしてここで満足せず、貪欲に上を目指してほしいところだ。取りあえず勝ち越しが目標になると思うが、少なくとも大負けするようなことはないと見ている。着実に力を付けてきており、11月場所の結果は抜きにして、今後が非常に楽しみである。そして将来的には師匠譲りの吊りを主体とした力強い相撲を期待したい。