祖父の背中を追いかけて 琴ノ若 相撲の取り口

 取り口は右四つ得意という部分は父の初代琴ノ若と同じだが、父は右四つに組み止める相撲と上手投げを得意としていた。また「ミスター3分」とも呼ばれ、相撲が長かった印象がある。一方琴ノ若は突き押しでも相撲が取れ、父のように四つに組み止める相撲ではない。組み止めても状況によっては再度離れることも多く、相撲に柔軟性がある。体も柔らかいが、取り口も柔軟性がある。

 そして父との決定的な違いは先程触れたが相撲の速さである。速攻相撲が得意という訳ではないが、四つに組んでから勝負に出るスピードは速い。父のように廻しを取って動かないといった相撲はほとんどない。この点は父よりも祖父・琴櫻から受け継がれたと私は思っている。時に負けることもあるが、土俵は狭く、速い相撲で決着を付けるのが基本である。また早く勝負を付けようという姿勢に好感が持てる。ということで体格は父に似ているものの、相撲内容は父とはかなり違う。一緒なのはたまに見せる土俵際の突き落としくらいである。

 課題はやはり立ち合いである。ただこの課題は入門後からのものであり、時に壁にぶつかりながらも、少しずつ克服してきている。また入幕後は立ち合い負けした相撲も多かったが、徐々に力を付けながら五分の立ち合いができるようになってきた。9月場所2日目は1月場所に優勝した大栄翔を突き出しで破っており、結果を出しながら自信を付けていきたい。

 能力的には上位力士に通用する力はあると思う。しかし現時点では上位力士を次々と倒すような勢いは感じない。また今までも少しずつ番付を上げてきたように、これからも徐々に力を付け、番付を上げていきそうだ。やはり特長である柔軟性を活かしたい。右四つにこだわるのではなく、相手を見ながら体勢を変えていくのが琴ノ若には合っている。相撲センスは持っているので経験を積みながら自分の相撲を見つけていけばいいのではないかと思う。性格的にはおっとりした部分も見られ、少し気長に見ていきたい力士である。

続く