2025年1月場所個別評価 王鵬

 今場所は西前頭3枚目だったが12勝3敗の好成績で初三賞となる技能賞を受賞した。初日から役力士を倒す活躍を見せ、6連勝した。7日目からの大関戦は連敗し、前半戦を6勝2敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばしたが12日目は霧島に敗れて3敗目となり、痛い黒星となった。しかし優勝争いで単独トップの金峰山戦は残しており、どこで当たるかが注目だったが千秋楽での対戦となった。自身は3敗を守り、金峰山は2敗ということで勝てば優勝という一番だった。そして金峰山を押し出し、初優勝に待ったをかけると同時に決定戦に持ち込んだ。決定戦は豊昇龍を含めた3人による巴戦となったが豊昇龍に敗れ、初優勝は逃した。

 間違いなく今場所の土俵を盛り上げた立役者である。そして相撲内容も格段の成長を見せた。3日目の若元春戦は過去の対戦成績は1勝6敗と苦手としていたが、突き合いから右のど輪を入れて一気に後退させるとそのまま突き倒した。5日目の大の里戦は過去は3戦全敗であり、そのいずれもが完敗という内容だった。しかし相撲は突き起こして大の里の出足を止めると左を差し、相手得意の右差しを封じた。そして最後は大の里が前に出てくるところを左から掬って送り出した。

 そして金峰山戦である。本人には失礼だが、私は金峰山の突き押しは止められないと予想していた。しかし相撲はいい意味で裏切った。金峰山ののど輪をこらえると少しだけ下がって右からいなした。すると金峰山がバランスを崩した。その後は形勢が逆転し、突き立てると土俵際で左下手を取られながらも構わず押し出した。右からのいなしが勝因であり、絶妙だった。また体の柔らかさが活きた相撲だった。大一番で勝負強さを発揮し、このあたりはやはり大鵬の孫であり、血を受け継いでいる。決定戦では豊昇龍に屈したが、私としては本割で勝っただけで十分である。おそらく本割で勝ったことで力を使い果たしたはずである。初優勝は後の楽しみに取っておきたい。

 内容に関しては前に出る相撲だけでなく、劣勢になっても粘りのある相撲を見せていた。守りの相撲が取れていたのも今後に向けてプラス材料である。負けた相撲に関しては豊昇龍戦と霧島戦はスピード負けであり、琴櫻戦は対応力で上回られた。この部分は稽古と本場所の土俵で克服できると見ている。

 来場所はすんなりと新三役となりそうだ。勿論まずは勝ち越しである。そして新三役ということで追う立場から追われる立場となる。研究されると思われるがどのように対応していくのか注目である。ただ最近は精力的に出稽古に行くようになっており、師匠によると意識が変わってきたようである。よって二桁勝利を挙げ、大関に向けて前進する可能性もある。体全体を使えるようになってきており、大鵬の孫ということで今後も目が離せない存在となりそうだ。