2022年9月場所個別評価 栃武蔵

 今場所は新十両で東14枚目だった。そして本名の菅野から改名したが11勝4敗の好成績で4年ぶりとなる新十両優勝を飾った。初日から白星を並べ、一気に勢いに乗った。そして7日目からは連敗し、6勝2敗で前半戦を折り返した。また後半戦も白星を並べ、13日目に11勝目を挙げると14日目は自身の相撲の前に4敗で追っていた北青鵬が敗れ、優勝が決まった。

 栃武蔵は埼玉県入間市出身で春日野部屋所属であり、年齢は23歳である。身長183センチ、体重157キロと体格には恵まれており、右四つ・寄り・上手投げを得意としている。中央大学では2年次に学生横綱のタイトルを獲得するなど実績を上げ、2021年3月場所に三段目100枚目格付出しでデビューした。その後は順調に番付を上げ、所要9場所での十両昇進となった。

 内容に関しては立ち合いで左上手を取り、一気の攻めで白星を挙げていた。また先場所までとは違って立ち合いの圧力が格段に増したので上手が取れなくても前に出る相撲で相手を圧倒していた。

 特に良かったのは6日目の北の若戦と12日目の輝戦である。北の若戦は立ち合いで相手に左を差されたものの、下がりながら巻き替えると一気に寄り切った。輝戦は立ち合いで左前廻しを取ると左に体を開いて投げを打ち、最後は送り出した。どちらも今場所の立ち合いの圧力の強さを象徴するような一番であり、攻めが速い上に厳しかった。この相撲が取れれば幕内でも十分取れると思う。

 負けた相撲に関しては8日目の北青鵬戦は十分の体勢から土俵際まで寄り立てるも寄り切れず、残されて逆に寄り倒された。北青鵬は廻しを取ると滅法強い力士なので負けたのは仕方ないが、最後寄った時はがぶり寄りをしていれば寄り切れたかもしれない。また島津海戦と熱海富士戦は左上手を取れず、懐に入られて一気に攻められた。取り口としては懐に入られやすい相撲でもあるので、懐に入られない相撲が求められる。

 来場所は東7枚目という番付となったが再度の大勝ちを期待したい。今度は対戦相手も左上手を意識してくると思われるのでどう対処していくかがポイントとなりそうだ。それでも一番大事なのは立ち合いの圧力である。部屋には栃ノ心と碧山がおり、ぶつかり稽古で磨いていきたい。また栃ノ心、碧山ともにベテランの域に入っており、二人に代わって部屋を背負っていかなければいけない力士である。部屋には他に若手力士が多数いるが、栃武蔵が若手力士の先頭に立って部屋を盛り上げていきたいところだ。