2025年1月場所個別評価 豊昇龍
今場所は12勝3敗という成績で2度目の優勝を果たすと同時に大関初優勝となった。琴櫻同様綱取り場所だったが5日目は熱海富士に小手投げで敗れ初黒星となった。そして8日目は正代に押し倒しで敗れて2敗目となり、綱取りに向けて厳しい状況になった。翌9日目も平戸海に敗れて連敗となり、綱取りが更に厳しくなった。しかしその後は立て直して優勝決定戦に持ち込むと金峰山、王鵬に連勝し、逆転優勝を決めた。また場所後の1月29日に開かれた3月場所の番付編成会議と臨時理事会を経て横綱昇進が決定した。
内容に関しては先場所同様、自分の相撲が取れていた。負けた相撲に関しては熱海富士戦は立ち合いで両差しを狙い、熱海富士に右を差させないという意図が見えた。しかし攻防の中で左上手を取られ、動きを止められた。その後左上手を切り、前に出たところを左からの小手投げで裏返しにされた。本人的には左上手を切るところまでは想定通りだったかもしれない。しかし上手を切ったところで小手に巻かれており、動きを止められていることに変わりはない。よって左上手を切ったところで勝てると思ったことが敗因と見ている。熱海富士は今場所は5勝10敗と負け越し、来場所対戦する可能性は低いが、苦手としているので今後の大きな宿題である。正代戦は押し込めなかったところで正代に右にいなされ、足が止まったことが敗因である。内容は悪くなかったが、綱取りのプレッシャーで肩に力が入っていたことが原因と見られる。平戸海戦はこれ以上負けられないということで明らかに肩に力が入っていた。自滅と言っても過言ではない。ただ前に出る姿勢は見えており、その部分で悪い内容とは言えない。おそらく師匠の立浪親方の「楽しくやれ」というアドバイスは、相撲内容を把握した上での助言だと思われる。
さて来場所は横綱で迎えるが照ノ富士に代わる一人横綱となる。私的には横綱昇進には反対していないが、今後に向けて課題が二つある。一つは技術面である。立ち合いの踏み込みが鋭くなったので、まとまった白星が挙げられる内容になってきた。ただ今場所は3つ負けているように、白星を並べるまでは至っておらず、更なる安定感の向上が求められる。現在の実力では横綱の地位を保つのは厳しく、地力強化が不可欠である。
そしてもう一つが精神面である。今場所でいえば平戸海戦は気持ちを切り替えられなかったことが敗因である。また過去には取組後礼をせずに土俵を下りたり、豪ノ山戦では1分以上手を付かず、物議を醸したこともあった。横綱ともなれば大関以上に周囲から厳しい目で見られることになる。これまで見た限りでは叔父の朝青龍のように協会を追い出されることはないと思うが、先述のような細かな問題を起こす可能性は否定できない。よって精神的な部分でどれだけ成長できるかが今後を大きく左右しそうな気がする。その点で個人的には少し心配でもある。ただ横綱に上がった以上、横綱としての役割を果たしていくことに期待したい。
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