2021年1月場所個別評価 朝乃山

 正代同様カド番だったが11勝4敗という成績だった。初日は大栄翔に押し出しで敗れ、黒星スタートとなった。そして3日目は小結御嶽海に敗れて2敗目。6日目は宝富士に敗れて3敗となり、カド番脱出が危ぶまれた。しかし7日目からは連勝し、11日目に勝ち越しを決め、カド番を脱出した。しかし12日目は関脇照ノ富士に敗れて4敗となり、優勝争いから大きく後退した。終盤は連勝し、11勝で場所を終えた。

 内容に関しては序盤戦は体の動きの悪さが目立った。ただ部屋には他に関取はおらず、出稽古できない状況なので仕方がない部分もあり、同情の余地はある。また師匠の交代があり、新体制になじめていないというハンデも抱えていた。しかし勝った相撲に関しては完勝がほとんどであり、負けた相撲との差が際立った印象がある。

 負けた相撲に関しては初日は当たりの強い大栄翔ということで初日としては相手が悪すぎた。御嶽海戦はかち上げに行くも空振り、下に入られて電車道で持っていかれてしまった。そして悔やまれるのが宝富士戦である。右四つに組み止めたかに見えたが腰高であり、宝富士に投げられてバランスを崩すと最後は上手投げで裏返しになった。結果論だがこの一番に勝っていれば優勝できた可能性もあり、悔やんでも悔やみきれない黒星となった。照ノ富士戦は右四つの力勝負となったが右下手を取るもおっつけられながら左上手を取られ、左は差されて寄り切られた。何度も観てきているが完敗である。そして技量も番付は下だが照ノ富士のほうが一枚上である。

 場所後は幕下力士相手に順調に稽古ができており、それが何よりである。そして「自分は心、技がない。技を足していきたい。」と語っていたようだ。相撲は心技体とはよく言ったものだが私はプロ野球読売ジャイアンツの原監督が言う「体技心」という言葉が大好きである。つまりまずは健康な体があることが大前提であり、その上で技を徹底的に磨く。そして精神面は後からついてくるという考えである。朝乃山は立派な体は持っているので自分なりに考えて技を徹底的に磨いてほしい。一朝一夕にはいかないと思うが上を目指すには不可欠である。それでも最近の朝乃山は左上手にこだわらず、考えながら相撲を取っているのはよく分かる。確かに現在は技量不足かもしれないが毎日の稽古の積み重ねで少しずつ技量を高めてほしい。

 3月場所に関しては優勝争いに絡んでほしいが、序盤は1月場所同様、苦しい土俵になるかもしれない。出稽古禁止の状況では仕方がない部分もある。序盤をあまり意識せず、15日間トータルで考えてほしいところだ。情報の限りでは自分なりに考えて稽古をしているみたいなので更なる進化を期待したい。そして少し時間がかかるかもしれないが横綱になって欲しい力士である。