2024年7月場所を振り返って 優勝争い 優勝決定戦 照ノ富士ー隆の勝戦

 相撲は照ノ富士が踏み込むも本来の出足ではない。逆に隆の勝に右のど輪から右を深く差されると上体が起き、寄り立てられた。左も差されており、ピンチに陥ったが左から小手に振った後右を差し、隆の勝の動きを止めた。その後右の腕を返し、左上手を取って盤石の体勢で寄り切った。取組後隆の勝の額に汗は見えなかったが、横綱の額はびっしょりと汗をかいていた。そして額の汗は背負っているものの重みでもある。苦境に立たされたが見事に乗り越えた。特に部屋関係者の人はホッとしたに違いない。

 照ノ富士は両膝が限界に達した中で隆の勝の当たりを堂々と受け止め、最後は組み止めて寄り切った。これぞ横綱である。また右を差し、腕を返したところは勝負処であり、非常に見応えがあった。技術だけでなく、普段の稽古から私生活まで、あらゆるものが詰まっているように見えた。人間は土壇場に追い込まれてからが勝負であり、その部分では人間ドラマとしていいものを見させてもらったと思っている。

 隆の勝は優勝を逃したのは確かに悔しいかもしれない。しかし決定戦に駒を進めたのは今後の相撲人生においてプラスであり、財産となりそうである。内容も負けはしたものの自分の相撲は取っており、力を出し切ったように見えた。また終盤は右のど輪、左おっつけという新たな勝ち筋ができた。右差しの形も悪くないのだが、のど輪の方が相手が対応しにくくなるので嫌がられると思う。個人的にはのど輪押しが得意の大栄翔や玉鷲を手本としつつ、自分なりにアレンジして欲しいと考えている。

続く