嫌らしい相撲を取る男! 翔猿 師匠の紹介 貴闘力との張り手合戦

 そしてもう一つ忘れてはいけないのが先述の貴闘力との張り手の応酬である。1990年7月場所7日目の十両での取組だった。貴闘力がいつものように突き押しの中で軽く張り手を入れると大翔山のスイッチが入ってしまった。貴闘力の挑発に乗ってしまい、張り手で応戦した。途中は大翔山が両腕を振り回し、顔に命中させる場面もあった。また貴闘力よりも腕が一回り太く、貴闘力の張り手よりも威力があるように見えた。その後は両者疲れて頭四つとなり、最後は貴闘力が二本差して寄り切った。合計36発の張り手が入る凄まじい一番だった。

 今ではまず観ることのできない相撲内容である。勝った貴闘力は取組後は眼底骨折をしており、張られたことで吐き気があり、翌日は休場するかもしれないくらいだったようだ。一般人なら即死のレベルである。この一番でもう一つ面白いのが大翔山は滅多に張る力士ではないということである。よって頭に血が上り、歯止めが利かなくなってしまった。相撲は貴闘力が勝ったが、張り手の威力は大翔山の方が上であり、ダメージも貴闘力の方が大きかったように見えた。いずれにしても勝負ではなく、張り手の方に目が行ってしまう内容だった。今このような相撲を取ったら取組後審判部に呼び出され、注意されるのは間違いない。ユーチューブに映像が残っており、見たことのない人は是非とも見て頂きたい一番である。

続く