元関脇・寺尾の死去に関して 霧島のコメントについて

 意外だったのは告別式の時に大関霧島が「今でも寺尾の相撲を動画で見て参考にしている」と語ったことである。霧島の師匠の陸奥親方は現役時代は寺尾の兄弟子であり、活躍したのもほぼ同時期だった。あくまで私の想像だが、師匠に勧められたのではなく、師匠の現役時代の映像を見る中で寺尾の映像が入ってきたということだと思う。霧島は先場所は優勝し、今場所は綱取り場所となる。綱取りができるかは分からないが、それだけの力を付けてきたのは確かである。そして何でもできるのが持ち味だが、その一つが立ち合いで強く当たり、突き放してからすぐにいなすという相撲である。

 寺尾も相手を突き起こしてからのいなしを得意としていたが、霧島の相撲を観ると寺尾の相撲を参考にしているのがよく分かる。また自分なりにアレンジしており、激しい動きの中でいなすこともある。そして寺尾は軽量力士だったので土俵際でいなすことが多かった。一方霧島は150キロ近く体重があり、立ち合いの当たりが強いので土俵中央で決まることが多い。相撲は15日間あり、全てを全力で戦う訳にはいかない。ということで霧島の当たってからすぐにいなすという相撲は省エネ相撲と言う意味で今後も有効な勝ち筋となりそうである。また直接の接点はなく、あんまり話したことはないと霧島が語っていたが、霧島の研究熱心さを裏付けるものとなった。霧島はモンゴル人であり、寺尾の現役時代を伝える人は少ないかもしれない。しかし自ら研究し、寺尾の相撲を取り入れているというのは私としては非常に嬉しい。師匠の動画とともに寺尾の動画も参考にして頂点に昇り詰めて欲しいところだ。

続く