2023年11月場所個別評価 美ノ海

 今場所は西前頭15枚目で新入幕だったが9勝6敗で勝ち越した。また今場所新入幕4人の中で唯一の勝ち越しとなった。白星スタートを切り、3日目からは5連勝するなどして前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は9日目に7勝目を挙げるも10日目からは3連敗。しかし13日目は佐田の海を掬い投げで破り、勝ち越しを決めた。そして千秋楽は翠富士に勝ち、9勝で場所を終えた。

 4日目の錦富士戦で負傷し、4,5針縫ってもらったということで5日目以降は左目の上にガーゼを貼りながら奮闘していた。内容に関しては序盤は左前廻しが取れ、自分の相撲が取れていたのでそのままいい流れに乗れたという印象である。また左前廻しが取れなくても押し相撲を主体に対応できていた。まずは左前廻しを狙い、取れなかった時は押し相撲で前に出るという強い信念が見えた。十両で苦労しただけにその経験が生きた格好である。

 5日目の宝富士戦は左前廻し狙いと見せかけて左を差すと相手の左を手繰って横を向かせ、そのまま送り出した。相撲巧者らしい内容だった。9日目の遠藤戦は差しにくる相手を突き起こし、逆に突き立てられるも左がのぞいた瞬間、肩透かしを決めた。遠藤は自身が日大1年の時の4年でキャプテンである。「話しかけられないくらい雲の上の人。自身になるというより嬉しい」と語っており、幕内に上がった甲斐があったと思う。そして勝ち越しを決めた13日目の佐田の海戦は押し込むも左からいなされて残されると逆に寄られて反撃された。しかし左に回り込んでの掬い投げが見事に決まった。本人には失礼だが、本来はここまでキレのある動きをする力士ではなく、今場所の調子の良さを象徴したような内容だった。それでも簡単に土俵を割るような力士ではなく、その点ではらしさが出た一番と言える。

 さて美ノ海の紹介をしたい。美ノ海は沖縄県うるま市出身で木瀬部屋所属であり、年齢は30歳である。身長178センチ、体重141キロであり、押し、左四つ、寄りを得意としている。引退したが元十両・木崎海は弟であり、同じ木瀬部屋に所属していた。体は大きくないが左前廻しを取ると強く、取れなくても頭を下げた押し相撲を取り、しぶといタイプである。正攻法のように見えるが逆転勝ちもあり、大学相撲出身者らしく技を持っている力士である。

 1月場所は自己最高位を更新し、東前頭13枚目となった。幕内二場所目となり、今度は研究される立場となる。ただ若手ではないので研究されようとも自分の相撲を取るだけかもしれない。今場所くらい体が動けば幕内定着も十分期待できる。あとは馬力負けするような相撲を一番でも減らし、前傾姿勢を保つ相撲を取りたい。