2022年11月場所個別評価 平戸海

 今場所は西前頭16枚目だったが10勝5敗の好成績だった。先場所は幕尻で7勝8敗で負け越したものの、運よく幕内に据え置かれ、地元九州で幕内力士として迎えることができた。3連勝スタートし、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばし、12日目に幕内で初となる勝ち越しを決めた。その後も勢いは止まらず、14日目は錦富士を寄り切りで破り、白星を二桁に乗せた。また敢闘賞候補には挙がったものの、王鵬同様、過半数に満たなかったので受賞は見送られた。

 内容に関しては立ち合いで左前廻しを取ってからの速攻相撲はスピードがあった。ただ相手の懐に入るだけでなく、押し込んで相手の上体を起こしてから懐に入っていたので相手に粘られることはほとんどなかった。全体として見れば思い通りの相撲は取れていたように見える。また立ち合いで左前廻しを取りに行くのは悪くないが、そればかりだと相手に読まれてしまうので、その辺は押し込んだり、二本差したりという選択肢があってもいいと思う。また終盤の4日間は番付上位の力士との対戦となったが千秋楽の明生戦を除けば全て勝った。特に良かったのが14日目の錦富士戦である。相手も新入幕から勝ち越しを続けており、勢いのある力士である。そんな錦富士を相手に立ち合いから右を深くこじ入れ、左も差すと体を密着させ、一気に寄り切った。自分の相撲を取り切ると同時に相手に力を出させなかったという意味でも素晴らしい一番だった。錦富士戦に限らず、立ち合いの圧力とスピードに関しては相手が強くなっても通用することを証明したと言える。

 1月場所は西前頭10枚目となったが勝ち越しを期待したい。最近では少なくなった中卒の叩き上げの力士である。そして不利な体勢になっても決してあきらめず、最近の若者にしては珍しくハングリー精神を持った力士でもある。また精神面だけでなく、勝負処を逃さないなど相撲センスも持っている。年齢も22歳と若く、今後は幕内後半戦で活躍する存在になると思うので成長が非常に楽しみである。