2023年11月場所個別評価 豪ノ山

 今場所は東前頭4枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。序盤は1勝4敗と黒星が先行した。しかし6日目は霧島、7日目は貴景勝に勝ち、2日連続で大関を撃破した。8日目は若元春に勝ち、前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は9日目から連敗するもその後は巻き返した。7勝7敗で迎えた千秋楽は湘南乃海を押し出しで破り、勝ち越しが決定した。

 内容に関しては自分の力を試すかのように立ち合いからぶちかましてからの突き押し相撲を取っていた。見応えがあったのは2日目の大栄翔戦の取り直し前の一番である。先に押し込んだのは豪ノ山だったが大栄翔が突き返し、大栄翔がいなすも豪ノ山がこらえ、突っ張り合いとなった。その後両者がバランスを崩し、大栄翔が右から叩いたということで軍配は大栄翔に上がったが物言いが付き、同体取り直しとなった。豪ノ山は重心の低い押し相撲、大栄翔はのど輪押しなど相手の上体を起こしての突き押しを得意としており、両者のスタイルの違いもあり、非常に面白かった。私的には今場所一番の相撲だったと思っている。取り直し後の一番は大栄翔が勝ったが、力と力のぶつかり合いは非常に迫力があった。

 大関を破った相撲に関しては霧島戦は立ち合いから相手を突き起こし、右から突き落とした。本人は取組後引いた部分もあると語っていたが、相手を押し込んでいるので全く問題はない。逆に立ち合いの当たりが強い霧島に勝ったことを自信にしたい。これで対大関戦初勝利となった。貴景勝戦は相手の突き放しにも下がらずに逆に距離を詰め、相手の叩きに乗じて右を差し、一気に寄り切った。私としては貴景勝戦のような相撲をコンスタントに取れるようになって欲しいと思っている。相手の回り込みを許さず、一気に前に出るのが豪ノ山の相撲である。

 平幕力士に負けており、星は伸びなかったが現時点ではそれは問題ではない。今は上位力士に勝って自信を付けることと経験を積むことが大事である。三役は目指さなくても自分の相撲さえ取れれば結果は後からついてくるくらいの心構えでいいと思う。

 来場所は再度の自己最高位となるが、突き押し速攻の相撲を期待したい。豊昇龍はじらすような立ち合いを見せており、既に上位力士に警戒される存在になっている。次は稽古と本場所の土俵で力を付け、上位力士の輪の中に入っていくことが求められる。今場所二大関を倒した結果に満足せず、更なる飛躍を期待したい。