祝! 美ノ海新入幕 なぜ入幕できたのか?

 さて新入幕に関しては本人の努力もあるが、私は運も良かったと思っている。理由は3つある。

・平幕下位で二桁黒星の力士が多数出たこと

 平幕下位で5人も二桁黒星となるのは珍しいと言っていい。一方妙義龍や熱海富士が二桁勝利を挙げており、明暗が分かれた格好となった。また7月場所で大活躍した伯桜鵬が全休で十両陥落が決定的となり、合計6人が十両陥落となった。

・番付が十両3枚目以内ではなかったこと

 9月場所は東十両5枚目であり、3枚目以内ではなかった。これが3枚目以内だと前半戦は同じく十両上位の力士との対戦が続き、幕内力士と対戦することもある。ということで前半戦から白星を伸ばすのは力の違いがない限り難しいと言える。実際美ノ海は十両3枚目以内での勝ち越しはなく、5枚目だったからこそ4連勝スタートを切り、流れに乗れたと私は見ている。

・優勝争いに加わらなかったこと

 10日目終了時点では2敗であり、1敗の一山本と大の里を星一つ差で追っていた。しかし翌日からは連敗し、1敗の二人が星を伸ばしたため優勝の可能性がなくなった。9月場所は14日目に10勝目を挙げており、普段ならこの数字なら優勝争いをしてもおかしくない数字である。しかし優勝争いから外れ、スポットライトを浴びなかったのがプラスに働いたと私は思っている。肩に力が入らず、普段通りに相撲を取っていた印象である。

 そして運以外に言えるのが無欲が生んだ好結果ということである。新入幕の会見で語っていたが、貴源治戦での脳震とうを境に、幕内に上がりたいという気持ちよりも、毎日相撲を取れることが嬉しいという気持ちで相撲を取るようになったみたいだ。また今日が最後になるかもしれないという思いが強くなり、感謝と怖さを忘れてはいけないと考えるようになったようである。取組を見ても自分の相撲を取ることに集中しており、幕内を意識するような相撲は全く見られなかった。このようなことは相撲に限らず、人生にも当てはまる。美ノ海の相撲を観て、私も勉強させてもらったと思う次第である。

続く